フレッシャーズのための組み込みソフト開発講座 ――新人エンジニアがまわりの信頼を勝ち得るには...
●日本の工業製品の品質,ソフトウェアの品質
日本の工業製品の品質は高いと評価されていました.しかし,新聞報道などを見ると,ここにきて,製品の品質,ひいては技術者の作業の品質が低下してきているように思われます.実際,少し気を配れば回避できるような質の劣化が多くなっているのが現状です.品質を作り込むのは,その製品に携わっている人々であり,だれかひとりが油断すれば,それが不良品質となって現れるのです(図2).
品質にかかわる講演会などで(本音の)雑談をすると,「品質が良いのは,上位数割の会社だけだった」,「かつて品質にかかわる国際学会では日本は注目を浴びていた.最近では『日本』という国すら知られていない」など,ショッキングな話が出てきます.日本の工業製品の品質が劣化してきているのは,現在,技術の現場の中心にいる筆者らの世代の責任なのだと思います.上の世代の人たちは筆者らに,物質的に豊かな社会を用意してくれました.しかし,それを維持するための何かを伝えきれなかったのかもしれません.しかし,筆者らも危機感がないわけではありません.さまざまな品質改善活動を行っています.
よく,「ソフトウェア品質の見極めは難しい」と言われます.製品の内部で動作しているソフトウェアは機械製品のように人間の五感で感じ取ることが難しく,いきおい「動いていればよし」と判断されてしまいがちです.この判定方法は明らかに誤っているのですが,そうは言っても,どのようにして判定すればよいのかという判断基準を持つことは容易ではありません.
〔図2〕ひとりひとりの油断が不良品質につながる
品質を作り込むのは,その製品に携わっている人々.だれかひとりが油断すれば,それが不良品質となって現れる.
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