インターネット・アプライアンスはどこまで進んだか　──ユーザはその「操作性」に歓喜し，設計者はその実現に苦悩する

●インターネット接続の約束ごと，プロトコル

　すべてのインターネット・アプライアンスは，TCP/IP（transmission control protocol/internet protocol）をサポートしています．TCP/IPは，世界中のさまざまなコンピュータの間で，インターネットのファイルを高い信頼性で伝送するために開発された，パケット交換による業界標準のディジタル通信技術です．

　昨年（2000年）秋，米国Conexant Systems社とイスラエルConnect One社は，「Smart SCMチップ・セット」搭載モデムと，インターネット・コントローラ「iChip」を基本としたリファレンス・デザインを共同開発し，発表しました．このリファレンス・デザインを利用すると，インターネット・アプライアンスの設計者は，最小限のプログラミングによって新型の機器にインターネット機能を付加できるようになるでしょう．

　Conexant Systems社のSmart SCMチップ・セットは，モデム・コントローラとデータ・ポンプ，ROM，RAM，同社のシリコンDAA（data access arrange- ment）技術であるSmartDAA電話ネットワーク・インターフェースを組み合わせたものです．モデムは，業界標準（ITU-TS）のV.32bis（公衆電話網および2線式ポイント・ツー・ポイント専用電話回線で使用する，14.4kbpsまでのデータ転送速度の全二重モデムに関する勧告）やV.34（同33.6kbpsまでの全二重モデムに関する勧告）またはV.90（同56kbpsまでの全二重モデムに関する勧告）の変調を行うバージョンに対応しており，世界中の主要電話ネットワークのすべてと接続可能です．

　Connect One社のiChipはインターネット・コントローラのASSP（application specific standard product）で，ホスト機器のプロセッサとインターネットの間のデータを制御します．iChipはモデム・コントローラと連携して動作します．そして，電子メールやウェブ・ページの送受信を行うためのプロトコルを実行したり，TCP（transmission control protocol）ソケットやUDP（user datagram protocol）ソケットのオープン/クローズを行ったりします．iChipは，インターネット・プロトコルを格納・更新するための256Kバイトまたは512Kバイトのフラッシュ・メモリを内蔵しています．

　Connect One社の高レベルのAT＋iコマンド・セットを利用すると，インターネット用のプログラミングを行っていない機器メーカでも，単にiChip上のインターネット・プロトコル・コマンドを起動するプログラムを書くだけで，インターネットに対応した製品を作ることができます．

　そのほかの製品として，米国eDevice Technology社の「SmartStack」があります．SmartStackでは，一つのDSPを使ってインターネット・プロトコルとモデムの処理を行い，機器をインターネットに接続します．このDSPはソフトウェア・モデムの機能を実現し，インターネットへの物理的な接続を実現したり，クライアント・アプリケーションを実行したり，電子メールやFTP（file transfer protocol），Webサーバ，そのほかのインターネットの機能を実行するために必要なすべてのプロトコル処理を行います．

　膨大な数の新しいIPアドレスの需要を考慮して（この需要の増加は，今後数年間で生じる数百万台にものぼるインターネット・アプライアンスの普及によるものである），the Internet Software Consortiumは，現在のインターネット・プロトコル（IPv4）をいずれ新しいプロトコルに置き換えるべきだと考えています．業界団体は，すでにIPv6（Internet Protocol version 6）を開発しています．このIPv6は，改良されたプロトコル・セットであり，アドレス空間の拡大やヘッダの簡略化，フローの改善，認証機能，プライバシの保護などを行っています．