インターネット・アプライアンスはどこまで進んだか ──ユーザはその「操作性」に歓喜し,設計者はその実現に苦悩する
●ただ使いやすさだけが求められている
米国の市場調査会社であるInternational Data Corp.(IDC)は,3年後にはインターネット・アプライアンスの出荷台数は,全世界で8,900万台に達するという楽観的な予想をたてています.すでに発表されている携帯型インターネット・アプライアンスには,以下のような製品があります.
- 米国Aqcess Technologies社の「Qbe Vivo personal computing tablet(PCT)」(図1)
- 米国First International Computer(FIC)社の「Aqua Web Pad」
- 米国Frontpath社の「ProGear」
- 米国Honeywell社の「WebPAD」
- 米国IBM社の「NetVista」
- 米国National Semiconductor社と米国DT Research社,米国Metricom社の「Metro」
- 韓国Samsung社の「IZZI web」
米国Gateway社や台湾Quanta社,米国Microsoft社もウェブ・タブレットを開発中です.
新型のモバイル・インターネット・アプライアンスは,ごく限られた特定の作業だけを実行するように設計されています.特定の作業とは,例えば電子メールやインターネット閲覧など,エンド・ユーザ側での最小限の入力操作です.
インターネットに接続可能なそのほかのタイプのモバイル機器は,ディスプレイの大きさが限られていたり,操作が難しかったり,閲覧できるホームページのコンテンツが制限されていたりします.米国3Com社の「Audrey」や米国Compaq社の「iPAC」のようなワイヤレスでないインターネット・アプライアンスは,計算機としての機能を省いたデスクトップ・パソコンのようなものです.
インターネット・アプライアンスのパイオニア的存在であるNational Semiconductor社が刊行したThe Age of Informationでは,次のように述べられています.「こうしたユーザにとって親しみやすい機器が実際に行う処理は,エンド・ユーザの目には映りません.将来,情報機器は,MHz(動作周波数)やkbps(データ転送速度),MバイトあるいはGバイト(メモリ容量)といった,エンド・ユーザが気にも留めなければ,理解もしていない要素によって差異化されるようなことはなくなるでしょう.人々は電話をかけたりテレビのチャンネルを変えるのと同じくらい簡単に,インターネットにアクセスしたいと考えているのです」.
〔図1〕Aqcess Technologies社のQbe Vivoの外観
Aqcess Technologies社の個人向けコンピューティング・タブレット「Qbe Vivo」.モバイル・ウェブ・パッドの新しい流れをくむ製品の一つであり,2001年後半には市場に出回るようになると予想されている.