インターネット・アプライアンスはどこまで進んだか ──ユーザはその「操作性」に歓喜し,設計者はその実現に苦悩する
「解決しなければならなかった問題の一つが,8Mバイト以下のCompactFlashといっしょに動作するこのような機器の処理をどのように実現するかということでした.そこで当社は,たとえ圧縮していないファイルであっても,これまで以上の性能を発揮し,本体のサイズもずっと小さくできる,非常におもしろい高速圧縮技術を考案したのです.例えばわれわれのOSやブラウザやすべてのプラグイン・ソフトウェアは,わずか7Mバイト強のサイズになってCompactFlashに収められています.その7Mバイトのうち3.5MバイトはRealPlayerです.RealPlayerがなければもっとずっと小さくすることができたのですが,RealPlayerはインターネットには不可欠で,RealPlayer搭載の要望が非常に強いことから,われわれはこれを収めることにしました.ここで出たアイデアは,人々が8Mバイトのパーティションの中でデバイス(機能)を作れるように設計する,ということです.私は,デバイスのサイズはいずれ16Mバイトに移行していくものと考えています.開発側も時間の経過とともに,サイズをどこまで大きくする必要があるのかを計りかねていますが,そこが問題となって行き詰まることを望んでいる者はいないからです」とBe社のSelf氏は語っています.
一方,米国Bsquare社は,2001年2月に,設計,開発,普及のための同社の新たなインフラストラクチャ技術の主力製品である「iWin Information Appliance Design Kit」を発表しました.iWinは,Windowsの組み込みOSで動作する情報機器を開発するためのツールとソフトウェア一式を提供しています.
Bsquare社は,インターネット・アプライアンスを実現するため,非常に重要なソフトウェアを用意することにより,ソフトウェアの開発工数を削減したいと考えています.すなわち,このiWinキットにはカスタマイズ可能なGUIが含まれており,これによってOEM各社は以下の設計を行うことができます.
- 標準HTMLやJavaScriptを用いた各社の機器独自の「look and feel(見た目と操作性)」
- 機器の集中管理とフィールドでのソフトウェアの更新を可能にするリモート更新機能
- ソフトウェア・プラグインの枠組みと主要なアプリケーション・ソフトウェア
顧客企業には,松下電器産業,National Semi-conductor社,Philips社,そして管理用アプライアンス・プロバイダの米国Sageport社があります.
モバイル・インターネット・アプライアンスの開発では,既存の電子機器にインターネット用ソフトウェアやワイヤレス・システムを組み込みます.これは,小型のノート・パソコンを開発するよりも複雑な作業です.「この業界が最初に犯した失敗は,これらがまったく新しいクラスの機器となったとき,これらは安価なパソコンとなるだろうと考えたことでした」とBe社のSelf氏は述べています.モバイル・インターネット・アプライアンスの開発では,ハードウェア設計やソフトウェア設計について新しい発想が求められています.すなわち,これらの構成要素をいかにうまく組み合わせて開発するのか,という発想です.設計者はその製品に組み込まれている技術だけでなく,操作する人がその技術を最終的にどのように使うことになるのかまで,理解していなければならないのです.
Anita S. Becker
Techonology Editor,Portable Design誌
(Portable Design誌,2001年4月号より)