インターネット・アプライアンスはどこまで進んだか ──ユーザはその「操作性」に歓喜し,設計者はその実現に苦悩する
●カギを握るのはディスプレイ
インターネット・アプライアンスの価格が高くなると予測される要因は,ディスプレイ技術にあります.種類や大きさにもよりますが,通常ディスプレイのOEM(original equipment manufacturer)調達にかかる費用は250~500ドル程度です.
消費電力も問題になります.特に,TFT(thin film transistor)液晶ディスプレイを発光させるバック・ライトを強化しなければならないとき,問題となります.これは,ほとんどのインターネット・アプライアンスに採用されているタッチ・スクリーンの光透過を補うために必要です.
厚さ0.35mmの米国Synaptics社の新しい「Hyper-Thin TouchPad」は,モバイル・インターネット・アプライアンスや次世代のノート・パソコンに照準を合わせたタッチ・スクリーンです.オプションのサブボードには,タッチ・スクリーンを構成するために必要な部品のすべてが収められています.このサブボードは,HyperThinのセンサから離して取り付けることができ,設計の自由度に配慮しています(図2).
今年(2001年)初め,米国のConsumer Electronics Show(CES)で,オランダPhilips Components社のWeb Display Groupは,パネルの中にシステム・ボードを一体化した新開発のモジュールを発表しました.これは,ディスプレイを備えた薄型の携帯型インターネット・アプライアンスに使用するものです.このモジュールは,今年(2001年)後半には出荷が開始されると予測されています.
Philips社は製造パートナであるLG.Philips LCD社と提携したり,何社かのハードウェアやOS,ソフトウェアの大手開発会社と協力しながら,インターネット・アプライアンス設計に特化した形でハードウェアとソフトウェアを一つのモジュールに統合することに成功しました.第1世代のモジュールは,National Semiconductor社のGeode SC3200プロセッサを中核とするネット端末ディスプレイ・モジュール「S10LP-NG」と,米国Transmeta社の「Crusoe TM3400」プロセッサを基盤とするネット端末ディスプレイ・モジュール「S10LP-TC」です.
このネット端末ディスプレイは,消費者が利用する最終製品に対して,その機能が80%まで完成した形で顧客に提供されます.OEM各社では,それぞれ独自のデザインやユーザ・インターフェース,I/O,アプリケーション・ソフトウェア,ベース・ステーションなどを付加します.モジュールは,一体型の4線抵抗膜方式タッチ・スクリーンとインターネット接続用のシステム・ボードを備える液晶ディスプレイ(LCD),もっともよく使われているOSをサポートするソフトウェア・ドライバで構成されています.
〔図2〕HyperThin TouchPadの外観
Synaptics社の「HyperThin TouchPad」は,厚さ0.35mmで,独立したサブボードを持つタッチ・スクリーンである.インターネット・アプライアンス市場に照準を合わせている.