携帯機器向け燃料電池とウルトラ・キャパシタの動向 ――充電1回で数万時間連続稼働も夢じゃない!?
4. リチウム・ポリマとリチウム・イオン
別の見かたをしているのは,NEC(ニューヨーク州Melville)のstaff product marketing engineerのHameed Chaudhury氏です.「当社の顧客は製品を駆動するための電源を必要としていますが,そのために法外な値段を支払う気はありません.そのような局面 では,リチウム・イオン2次電池が鍵となるとわたしたちは考えます.リチウム・ポリマ電池ではありません.少なくともいまはまだです.リチウム・ポリマ電池の大量 生産は2003年ころにならないと無理でしょう」と同氏は言っています.
●当面はリチウム・イオン電池
その最大の理由はコストです.「顧客は新しい技術に出費する気があるでしょうか?」とChaudhury氏は疑問を投げかけています.「消費者をニッケル水素電池からリチウム・イオン電池に転向させるため,50セントあるいは1ドル多く支払ってもらうだけでも苦労しているのです」(Hameed Chaudhury氏).
NECは目標の一つとして,バッテリの設計者とスーパ・キャパシタの設計者の間の連携を密にすることを掲げています.この両者が手を結ぶことでバッテリの性能やサイクル寿命が向上する,という点で関係者の意見は一致しています.同社の実験室の試験では,スーパ・キャパシタを組み込むことで若干バッテリのサイズは大きくなったものの,バッテリ寿命が約60%延びたことを確認しています.
リチウム・ポリマ電池に消極的なのはNECだけではありません.米国Saft Batteries社(カリフォルニア州San Diego)もリチウム・ポリマ電池の開発に着手しましたが,1年以上も前に計画を白紙に戻しています.
Saft社のOEM marketing managerであるAndy Bartocci氏は「製品の質を要求レベルまで高めて製品化するために要する投資額が,当社にとっては高すぎると感じました.それに製造についても不確定要素がありました.いまでもリチウム・ポリマが市場でどれほど重要な存在になり得るか,疑問をもっています」と語っています.
そこで同社は別のもの,つまりリチウム・イオン電池の開発に投資することにしました.「きわめて薄い形状を追求するのでなければ,従来方式のリチウム・イオン電池はリチウム・ポリマ電池に勝るとも劣らないコスト効率のよい解決策です」とBartocci氏は言います.