携帯機器向け燃料電池とウルトラ・キャパシタの動向 ――充電1回で数万時間連続稼働も夢じゃない!?
2. メタノール燃料電池
ところがそこでMotorola社の研究者たちは燃料電池にともなう安全性の問題に突き当たりました.「容器に入れた水素はつねに漏れ出す危険性があります.このことを考慮しなければなりません.われわれはユーザが安全規制を気にせずに飛行機の中にもち込める製品を開発したいのです」とHallmark氏は語っています.
●基本構造
メタノール燃料電池の陽極側では,水素を使った方式と同じように触媒がメタノールを陽子に変換します.この反応の副産物として二酸化炭素が生成されます.その後の操作は水素を使ったシステムと同じです.メタノール燃料電池と水素燃料電池の最大の違いは,メタノール燃料電池では水のほかに二酸化炭素が生成される,という点です.
●「水」が問題
1W以下の電力が要求される携帯機器システムでは,1日に数cm3の水が生成されます.この水は集めて再利用する(Motorola方式)か,または蒸発させなければなりません.水の量 は多くありませんが,いずれにしても対応が必要です.
メタノールを使ったシステムにともなう問題の一つに,メタンを濃縮した形で直接使用できない,という点があります.一般 的には水で希釈しなければなりません.「大半が水でほんの少しメタノールが入った燃料容器を持ち歩きたい人はそうはいないでしょう.エネルギ密度があまり高いとは言えないのだから」とHallmark氏は言っています.
わかりやすい解決策として,集めた水で希釈する方法がありますが,これは簡単そうにみえてかなりむずかしい方法です.必要以上の水を集めてしまう可能性があり,余分な水の処理が必要となってきます.Motorola社の研究者は,まだ装置にいくつかの欠陥があり,これもその一つであると認識しています.水を再利用して希釈するためには,ある種のポンプ機構や液体の処理が必要となります.携帯機器用の電池として使うには,これらの機構部品をきわめて小さくする必要があります.
燃料補給に関する有望かつ究極の解決法として,万年筆のスペア・インクほどの大きさのカートリッジをエネルギ・システムに差し込んで使用する方法が考えられます.これで何週間か何ヵ月,あるいはそれ以上もつでしょう.カートリッジがからになったら,また再利用できます.補給間隔は,各システムがどれだけの電源を必要とするかによって異なります.