携帯機器向け燃料電池とウルトラ・キャパシタの動向 ――充電1回で数万時間連続稼働も夢じゃない!?
20世紀中頃,すでに燃料電池はスペースシャトルの主電源として活躍していた.アポロ11号とともに月へ行き,数々のミッションをこなした.そして21世紀初頭.いま燃料電池は環境にやさしく,驚異的な電池寿命をもつ次世代の電源として,再び脚光を浴びている.特に,バッテリの性能向上と長寿命化が求められている携帯機器の開発では,燃料電池の実用化に期待を寄せる機器メーカは少なくない.ここでは米国における携帯機器向けの燃料電池やウルトラ・キャパシタ,スーパ・キャパシタなどの開発動向を紹介する. (編集部)
1回の充電で,数時間どころか何日間も稼働し続けるフル装備のノート・パソコン.1回の充電で,数日間ではなく何ヵ月も使える携帯電話.夢のような話でしょうか?そう考える向きもあるかもしれませんが,燃料電池やスーパ・キャパシタ,ウルトラ・キャパシタといった次世代電源の開発に携わる者にとって,これはもはや夢の話ではありません.燃料電池やスーパ・キャパシタ,ウルトラ・キャパシタは数年以内には市販されるようになり,値段もそれほど法外なものとはならないでしょう.
事実,現在すでに燃料電池は実用化されており,ノート・パソコンや携帯電話の電力供給に使用することが可能です.いまはまだ解決しなければならない問題が山ほどありますが,開発に支障をきたすほどのものではありません.
一般に燃料電池とは,燃料を電気に変換する装置を指します.現在その大半が燃料に水素を,酸化剤に空気中の酸素を使用しています.これら二つの元素が化学的に結合して電気が発生し,副産物として水が生成されます.
水素以外の燃料としては,ほかの炭化水素,たとえばブタンやメタン,エタノールがあります.米国Motorola社の研究者は最近,Los
Alamos国立研究所と共同で行ってきた研究の一部を発表しました.彼らが使用した燃料は,アルコールを主成分とするメタノールを基本としています(図1).一般 にどの燃料を使用するかは,その燃料の保管方法や電気に変換する方法によって異なります.
〔図1〕ダイレクト・メタノール燃料電池
ダイレクト・メタノール燃料電池の試作品は,Motorola社とLos Alamos国立研究所が共同で設計した.1回の「充電」で携帯電話を1ヵ月間使用できる.