携帯機器向け燃料電池とウルトラ・キャパシタの動向 ――充電1回で数万時間連続稼働も夢じゃない!?
3. ウルトラ・キャパシタとスーパ・キャパシタ
電源としての可能性をもつもう一つの技術は,高いエネルギと電力供給能力をもつウルトラ・キャパシタです.これは,高エネルギではあっても高電力ではないスーパ・キャパシタとは異なるものです.今日のウルトラ・キャパシタは,従来の電解コンデンサまたは標準的なコンデンサの1,000倍から10,000倍のエネルギを蓄えることができます.そしてエネルギをかなりゆっくりと放出します.通 常は数分の1秒から数秒という単位でエネルギを放出しますが,バッテリよりははるかに早いのです.
●長寿命の理由――ウルトラ・キャパシタ
ウルトラ・キャパシタは効率の面ではコンデンサに近く,エネルギの面 では弱いバッテリに似た性質をもっています.もっとも重要な性質の一つは,寿命が長いことです.ウルトラ・キャパシタは何百回から何千回も充電できます.一方,バッテリは一般 に数百回までしか充電できません.またウルトラ・キャパシタは動作可能な温度範囲が広く,多くの場合,使用温度は-45℃から60℃となっています.
現在,一般にスーパ・キャパシタは,バッテリのバックアップ用に使われています.この場合,ユーザは新しいバッテリのタイム・スワップを考慮する必要があります.ウルトラ・キャパシタは,たとえば双方向ページャなど,短時間に高電流を必要とするような用途にふさわしいと思われます.そのような機器では,送信中は最大1.5~2Aの電流が必要となるでしょう.こうした小さなシステムに使われるバッテリは,通 常,1A以上になると働きが低下します.そこでウルトラ・キャパシタが短時間に突発的にエネルギを供給します.その後,ウルトラ・キャパシタは静止中に少しずつ充電されます.このウルトラ・キャパシタの働きにより,バッテリの寿命が長くなります.これはバッテリが突発的にエネルギを放出する必要がなくなるためです.
この種の用途では,ウルトラ・キャパシタを使用する以外に追加のバッテリを使用する方法があります.しかし携帯機器が小型であることを売りものにしている場合,この方法はあまり使われません.
システム内のスペースを抑えるため,ウルトラ・キャパシタをバッテリ・パックに一体化することもできます.米国PowerCache社(カリフォルニア州San Diego)のvice-president of business developmentであるRichard Smith氏は次のように語っています.「わたしたちは,バッテリ・メーカと,ウルトラ・キャパシタをバッテリ・パックに組み込むための研究を進めています.実現の可能性は非常に高く,実用化可能です.しかし今日では,ほとんどの設計者がバッテリを使い捨てにしたいと考えています.そのため,経済的な理由から,いまだにウルトラ・キャパシタはバッテリにではなく基本システム本体に組み込む傾向があります」.
理論上,ウルトラ・キャパシタは決して消耗することはありません.したがって充電できなくなったバッテリを捨てるときは,まだ完全に使えるウルトラ・キャパシタも捨てることになります.これはコスト効率の面 で,賢いやり方ではありません.
PowerCache社などのウルトラ・キャパシタ製品には,さまざまな形状のものが存在します.同社は現在,てっぺんに二つの接点をもつプリズム型の製品を発売しています.同社は,AAAバッテリ(単4形電池)と同じ断面 形状で高さが約3分の1のウルトラ・キャパシタの実現の可能性も研究しています.
ウルトラ・キャパシタは,燃料電池とも相性がよい技術です.酸素と燃料を燃やすエンジンと同様,ウルトラ・キャパシタにも始動モードがあります.始動モードとは送風機(blower)とファンが水素と酸素を結合させるプロセスを開始する期間のことです.このモードでは,燃料電池を動かすのに2~15秒間ほど電力を必要とします.この電力供給にウルトラ・キャパシタは効力を発揮します.これはバッテリでも可能ですが,ウルトラ・キャパシタのほうが得策とされるのは,寿命が長いためです.