インテグリティな技術コラム(11) ―― クロストーク・ノイズと二つの異なる伝送モード

碓井 有三

tag: 実装

コラム 2011年2月11日

 反射を式で解く方法は,本連載コラムの第3回で述べました.多くの式が登場して,うんざりされた方もいらっしゃるかと思います.クロストーク・ノイズを式で解くと,もっとたくさんの式が出てきそうです.確かに式だけで解こうとすると,このコラムのスペースでは足りないかもしれません.今回は,式の紹介は最小限にとどめ,クロストーク発生の原理を理解していただこうと思います.

 

コラム・連載「インテグリティな技術コラム」 バック・ナンバ
第1回  反射波形にはさまざまな情報が詰まっている
第2回  パルス幅によって変化するノイズの影響
第3回  ラプラス変換による分布定数の解
第4回  ラプラス変換からフーリエ変換へ
第5回  差動インピーダンス
第6回  転換点は10年前,メモリが非同期型から同期型へ
第7回  スタブの反射はSSTLで回避
第8回  メモリ・バスの周波数特性と転送速度
第9回  メモリ・モジュールのクロック分配 

第10回  トーナメント方式のクロックにおける反射回避方法 
 

 

●2本線路には二つの伝送モードの波が伝わる

 クロストークについて学習する際には,コモン(またはイーブン)とディファレンシャル(またはオッド)の二つのモードが存在する,というところから始めます.なぜこの二つのモードが存在するのか,3本ならどんなモードになるのか,4本なら...,という興味がわいてきます.

 それらの疑問はそのままにしておいて,ちょっとだけ式を見てみます.

 第3回のコラムで述べたように,ラプラス変換を用いた,反射波形を求める微分方程式は,以下のとおりです.

..... (1)

 これは定数項のない2階の微分方程式(斉次という)なので,速度について符号が異なり絶対値の等しい二つの波となります.すなわち,右行波と左行波です.2本線路のクロストークでは,以下の式の複二次式の4階の微分方程式を解くことになります.

..... (2)

 この式を解くと,2種類の速度の波が現れます.1本線路の式(1)は±aの根を持つ2次方程式に似ていて,2本線路の式(2)は±aと±bの2組の根を持つ4次方程式に似ている,と考えると分かりやすいかと思います.式(1)および式(2)はラプラス変換した式なので,負の根に相当する(指数の肩が負)のは右に進む波(右行波)で,正の根に相当するのは左行波です.速度の異なる2組の波が存在するところまでは理解できたと思います.

 

●2本の結合線路には加害者側と被害者側が存在

 図1は実際の2本の結合線路の例で,図2はその遠端の波形です.信号を加える側を加害者(aggressorまたはd-ing),加えてない側を被害者(victimまたはd-ed)と呼びます.

図1 結合線路の例

 

図2 結合線路の波形

 

 いずれの波形も,単なる反射波形とは形が異なっています.ここで両者の平均と,差の半分をとってみると,図3のようになります.

図3 和と差をとってみる

 

 この二つの波形は,あたかも単純な遠端の反射波形であるかのように見えます.開放された遠端の波形について,ドライバの出力抵抗をR1,線路の特性インピーダンスをZ0とすると,正規化した振幅は以下の式で表されます.

..... (3)

 図3からそれぞれの波形の振幅が分かるので,式(3)から特性インピーダンスが求められます.すわなち,以下の式からZ0を求めます.

..... (4)

 それぞれの振幅に対して,以下の値が得られます.

..... (5)

..... (6)

 また,波形の立ち上がり付近を詳しくながめると,1.0nsと0.96nsで波形が立ち上がっています.

 

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