インテグリティな技術コラム(11) ―― クロストーク・ノイズと二つの異なる伝送モード

碓井 有三

tag: 実装

コラム 2011年2月11日

●コモンとディファレンシャルの二つのモードで伝搬

 これは何を意味しているかというと,2本の線路の信号の,平均と,差の半分の波形が伝わっており,それぞれが異なる特性インピーダンスと異なる伝搬遅延とを有しているということです.線長が15cmなので,単位長当たりの遅延時間に直すと,それぞれ6.7ns/mと6.4ns/mとなります.この二つの波形がコモンvCとディファレンシャルvDです.よって,以下のようになります.

..... (7)

..... (8)

 加害者の線路はコモンとディファレンシャルとの和,被害者はそれらの差の信号となることが分かります.コモンとディファレンシャルは,それぞれ特性インピーダンスZCZD,および伝搬遅延tdCtdDを有します.

 

●クロストークを計算で求める

 ここで,図4(a)のように,2本の線路に,それぞれ等しい+1/2の信号を加えた場合を考えます.回路は完全に対称なので,v2vFとなります.式(7)および式(8)にこの条件を入れると,vD=0,すなわちコモンだけが伝搬していることが分かります.同じように,図4(b)の場合は,2本の線路に符号の異なる+1/2と-1/2の信号を加えた場合だと,v2vF=0になるので,vC=0,すなわちディファレンシャルの波だけが伝搬します.したがって,コモンとは文字どおり,2本の線路で同じ極性の信号が伝搬するモード,ディファレンシャルとは逆極性の信号が伝搬するモードであることが理解できたと思います.

図4 二つのモード

 

 さて,図4の遠端の信号vFをそれぞれ求めます.それぞれのモードの特性インピーダンスZCZDを用いて,信号にもCDのサフィックスをつけると,以下のようになります.

..... (9)

..... (10)

 ここで,これらの式の両辺を加えると,以下の式が得られます.

..... (11)

 下側の線路は,信号源が+1/2と-1/2であったので,重ね合わせると信号源がなくなる,すなわち何も信号を加えてない線路に式(11)の信号が現れることを意味します.式(11)が,図2の被害者の信号vFです.

 

●基礎クロストーク係数を導入

 ここで,新たな概念として,式(12)で定義される基礎クロストーク係数ξを導入します.

..... (12)

 2本線路の公称の特性インピーダンスZ0は,ZCZDの幾何平均,すなわち以下の式で表されます.

..... (13)

 式(12)および式(13)を用いると,以下のようになります.

..... (14)

..... (15)

 ξが十分に小さいという条件で式(11)を変形すると,以下のようになります.

..... (16)

 つまり,クロストークは基礎クロストーク係数ξに比例します.

 

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