インテグリティな技術コラム(11) ―― クロストーク・ノイズと二つの異なる伝送モード
●線路パラメータを求める
ソルバ(電磁界解析ソフトウェア)を用いて,図1のプリント配線板の断面構造から線路パラメータを求めると,以下の式が得られます.
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これらのパラメータから,特性インピーダンスと伝搬遅延の値は以下のようになります.
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すなわち,先に波形から求めた値と同じになりました.
●3本線路や4本線路ならどうなる?
さて,3本線路や4本線路ならどうなるか,という疑問は置き去りにしてきました.少しややこしいので,興味のある方だけ以下をお読みください.
3本線路なら,3種類のモードの波が存在することは容易に想像できます.図1の断面図にもう一つ線路が追加された場合,すなわち,線路(1~3)に対して各モード(a~c)のベクトルの絶対値が1になるように選ぶと,各線路の信号は図5のようになります.各モードは右行波と左行波とから構成されます.モードaは,2本線路のコモンに似ています.モードbは,外側の2本だけにディファレンシャルに似たモードが伝わります.モードcは,中央の線路と外側2本との間でディファレンシャルに似たモードとなります.
4本線路の場合,さらに1本の線路を追加すると,図6のようにモードも4種類になります.モードaは2本線路のコモンに似たモード,モードbは外側同士でディファレンシャルのようなモード,モードcは内側同士でディファレンシャルのようなモード,モードdは外側の2本と内側の2本とでディファレンシャルのようなモードとなります.
これが分かって何の役に立つのかと思われるかもしれませんが,差動信号のクロストークを解くためには,4本線路を解く必要があります.これについては次回に述べる予定です.
うすい・ゆうぞう
シグナル インテグリティ コンサルタント
http://home.wondernet.ne.jp/~usuiy/