インテグリティな技術コラム(3) ―― ラプラス変換による分布定数の解
分布定数回路を式で解くということは,何となく敷居が高いと思っていないでしょうか.「ラプラス変換」を使って過渡現象を解いたことがある人なら,LCRを含む過渡現象よりも難易度は低いと思います.用いるラプラス変換は,時間遅れのみです.本コラムを最後まで読めば,敷居はぐっと低くなりますので,頑張ってください.
コラム・連載「インテグリティな技術コラム」 バック・ナンバ
第1回 反射波形にはさまざまな情報が詰まっている
第2回 パルス幅によって変化するノイズの影響
●「分布定数回路を解く」前に
「分布定数回路を解く」前に,「回路を解く」にはどのような手法を使うかを振り返ってみます.基本的な電気回路は,「オームの法則」と「キルヒホフの法則」を用いますが,よりスマートに解くために,「鳳-テブナンの定理」や「ノートンの定理」,「重ねの理」などを用います.交流になると複素数となって,位相の概念が出現しました.そして最後は時間応答,いわゆる過渡現象を求める,こんな順序だったと思います.
過渡現象では微分方程式が出てきますが,これがやっかいなので,それを簡単に解くために用いるのがラプラス変換です.ラプラス変換を用いると,微分方程式がシンプルな算術方程式になり,簡単に解けるようになります.実は,このように回路を記号法で解く方法はヘビサイドがまとめたものですが,数学的な裏付けを行っていなかったため,数学界ではラプラスが考えたものと同じとして「ラプラス変換」という名前となりました.それにしても,「微分はpをかけて,積分はpで割る」,何という簡単な方法を思いついたのか,その功績は尊敬に値します.
●分布定数線路の等価回路と微分方程式
図1は分布定数線路の等価回路です.
LおよびCは単位長当たりの値なので,微小区間Δxをかけて,LΔxおよびCΔxが1区間の値です.ある区間に対して,次の区間の電圧および電流の増加分をΔvおよびΔiとすると,
が得られます.式(1)をラプラス変換します.微分はsを乗じる,すなわち,
ですから,
となります.式(2)の両辺をΔxで割って,Δx→0とすると,次式のように微分となります.