iPhoneと組み込み技術で未来を考える(4) ―― 「組み込みシステム」という視点
前回までいくつか紹介してきたように,iPhoneはライフ・ハブとして生活の一部に溶け込んだ存在となりつつあり,さまざまな局面での活躍が期待できます.今回は,こうしたさまざまな利用シーンの裏にある「システム」という視点から,iPhoneについて考察してみようと思います.
コラム・シリーズ「iPhoneと組み込み技術で未来を考える」 第1回 見守りシステムやパートナ・ロボットはこう変わる 第2回 環境情報を取得・再構成してパートナ・ロボットを実現へ 第3回 組み込みシステムとフェイル・セーフ |
まずは,「システム」という視点に立った事例を紹介します.日本医療機器の安心センサに使われている空気圧センサは,空気の入ったチューブを押すと,この空気圧の変化から状態変化を検出します(図1(a)).構造上,マットのどの部分を押しても空気圧の変化を偏りなく計測できる工夫がなされています.このチューブを取り外すと,ドアや窓の開閉など,室内のわずかな空気圧の変化でも計測できるようになり,部屋の中への人の出入りなどを検出できます(図1(b)).つまり,「測る」対象がチューブの中の空気圧から部屋の中の空気圧へと拡張されたわけです.言われてみれば当たり前のことなのかもしれませんが,原理を理解していても,少しの工夫で本来の用途とは異なる使い方ができることは,非常に興味深いと思います.
(a) 空気圧センサ
(b) 空気圧の変化
図1 空気圧センサによる状態計測の例
(a)は,チューブがつながった状態の空気圧センサ.(b)の(A)はドアが開いたときの変化,(B)はドアが閉まったときの変化.