iPhoneと組み込み技術で未来を考える(4) ―― 「組み込みシステム」という視点

久保田 直行

tag: 組み込み

コラム 2010年6月 3日

●「組み込み」という視点で見ると

 組み込みシステムは,ある特定の目的のために,最低限の部品・費用・時間で開発するのが理想です.これを実現するため,システムという視点から開発が行われるのは周知の事実です.一般に「システム」という言葉は,「要素から全体への合成」と「全体から要素への分解」という視点からしばしば議論されます.要素から全体への合成は,組み込み技術者にとって必要不可欠な能力です.

 さて,前者の「要素から全体への合成」は「合成の法則」と呼ばれます.要素を組み合わせることにより,各要素が持つ機能よりも優れた機能や異なる機能の発現が期待されます.組み込みシステムの開発では,外部設計から内部設計へとハードウェアとソフトウェアにおける要素の分解が行われながら,これらのハードウェアとソフトウェアにかかわる人間の行動を考慮した全体への合成に基づいて設計が進みます.この分解と合成を効率よく行うことこそ,低コスト化と開発期間短縮のために最も重要となります.

 また,後者の「全体から要素への分解」は,分解の法則と呼ばれます.一般に,全体システムに合成されている一つの要素は,その全体システムの中では,ある限定された機能しか果たさないものです.しかし,その全体システムから取り出された要素には,その全体システムにおける本来の機能とは異なるさまざまな機能を実現する可能性が含まれています(図5).分かりやすい例を紹介すると,自動車のタイヤは駆動力を伝える機能を果たしますが,取り外されたタイヤを重ねるといすになります.


図5 二つの要素の合成と分解により発現しうる機能の考え方
 

 


 

 別の例として,「アポロ13」などの映画では,この分解の法則と合成の法則の繰り返しが,ドラマチックに描かれています.ヒューストンにあるNASAの宇宙センターでは,スペースシャトルという限られた空間の中で利用可能なものを全て並べて,創り上げては分解を繰り返し,クルーたちが生き残るために必要なフィルタを手作りしています.このフィルタでは,靴下がバッファ代わりに利用されていました.ジェラルド・グリフィン元管制官は,「管制官は,あらゆる選択肢を試すよう訓練られている.選択肢がなくならない限り,問題ではない.これがよい例だ」と述べています(2).一方,ワインバーグは「問題とは,望まれた事柄と認識された事柄の相違である」と述べています.

 これらについての要求分析や問題解決については,次回以降のコラムに譲ることにして,「システム」という視点は,組み込み技術の開発から運用に至るまで,さまざまなシーンで生かされています.

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