iPhoneと組み込み技術で未来を考える(2) ―― 環境情報を取得・再構成してパートナ・ロボットを実現へ

久保田 直行

tag: 組み込み

コラム 2010年3月15日

●リアル/バーチャルの世界に現れる3種にパートナ・ロボット

 多くの人々は,日々,ネット配信された情報やWeb上のさまざまな情報に触れています.Webページは情報の泉でもありますが,一方で,必要とする情報を探すためには,いろいろな工夫を必要とします.欲しい情報にいつでもアクセスできる環境,それを実現する手段の一つがiPhoneです.高度に情報化された社会において,欲しい情報に瞬時にたどり着けることは非常に重要です.また,現在,電子化が進み膨大な情報が蓄積されつつありますが,そのような膨大な情報を構造化し,組織化していくことも重要になります.

 現在,検索エンジンの発展によって検索能力は非常に向上していますが,欲しい情報にたどりつくためには,検索に用いるキーワードの組み合わせなど,いろいろと考えなければなりません.そこで,人に代わってこのような情報サービスを行うための一つの手段として,パートナ・ロボットを用いることが考えられます.今後,パートナ・ロボットが情報サービスを行うための「コンシェルジュ」となりうる時代がくると期待されています.

 第1回では,iPhoneを用いたモニタリングや遠隔操作に関する応用事例を紹介しましたが,今回は,これらの応用事例を支える概念や理論について考えていきたいと思います.

 パートナ・ロボットについては,次に述べる通り,人間との相互作用の形態にあわせて,少なくとも3種類の「かたち」が考えられます(図1).





図1 情報支援を行うパートナ・ロボットの分類注1

 

 一つ目は,「物理的パートナ・ロボット」です.物理的パートナ・ロボットとは,人と触れあうのと同じように多様なコミュニケーション手段をとることができるロボットです.筆者らは,ロボットが人間のジェスチャを認識したり,人間との相互作用を介して行動学習を行う手法を提案してきました.また,これらの研究では,ロボットとの物理的な相互作用を介して学習することにより,人間がより自然なコミュニケーションを行えることも示してきました.

 二つ目のパートナ・ロボットは,直接的な移動機構こそ持ちませんが,携帯電話やPDAなどのサイズのロボットで,人がどこにでも持ち運べるタイプのものです.これを「ポケット・パートナ・ロボット」と呼ぶことにします.基本的にこのロボットは仮想環境上のエージェントとして存在し,iPhoneでは,カメラやマイクのほか,タッチ・パネル式のインターフェースや加速度センサなどを利用した外部入力を用いて,外界との相互作用を実現します.

 筆者らは,Apple社のPDA「Newton Message Pad」上で,タッチ・パネル式のインターフェースを用いたロボットのナビゲーションについての研究を行ってきました.具体的には,人間のナビゲーション・パターンを学習することにより,人間の操作に合わせて,画面上でより少ないタップ回数で目的地の選択が行えることを示しました.このようにユーザの操作パターンに合わせて学習することで,遠隔操作などのユーザビリティを向上させることができます.

 三つ目のパートナ・ロボットは,「仮想環境上のパートナ・ロボット」です.前述のポケット・パートナ・ロボットのように仮想環境上のエージェントですが,ユーザはシミュレーション・ゲームのように,仮想環境内のロボットや人間として間接的に相互作用を実現します.この仮想環境上の間接的な相互作用において,筆者らは情動モデルを用いたコミュニケーション・システムを提案しています.情動モデルを用いることにより,人と人の感情的なコミュニケーションのような振る舞いができることを示してきました.

 ここで,一つ目の物理的パートナ・ロボットと三つ目の仮想環境上のパートナ・ロボットはいずれも人間と相互作用します.それぞれ実環境,仮想環境という違いはありますが,ヒューマン・インターフェースは対称的な関係にあります.一方,二つめのポケット・パートナ・ロボットでは,実環境の人間から仮想環境内のパートナ・ロボットに働きかけます.つまり,非対称なコミュニケーションになります.

 しかしながら,これらのパートナ・ロボットは,それぞれ物理的な相互作用やコミュニケーションの方法は異なりますが,ユーザとの相互作用の履歴や個人情報については共有することができます.さらに,ロボット自身も同じ相互作用ルールを共有することにより,形態はそれぞれ異なるものの,あたかも同一のパートナ・ロボットと相互作用を行っているかのような状況を作り出すことができます.

注1:ロボットの分類方法は,さまざまなものが提案されており,例えば,ネットワーク・ロボットの分野では,ビジブル型ロボットや,ヴァーチャル型ロボット,アンコンシャス型ロボットなどの分類があります.

 

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