実験で学ぶ電池の基礎 ―― モバイル機器を安全に設計するために知っておきたい

舘謙太

tag: 電子回路

技術解説 2008年7月 8日

 メーカや使い方などのさまざまな条件によって,電池の放電容量は異なってきます.おおよその目安として市販の乾電池の放電容量は次の通りです.

  単4形マンガン(黒):450mAh
  単3形マンガン(赤):700mAh
  単3形マンガン(黒):1000mAh
  単3形アルカリ  :2000mAh
  単3形ニッケル水素:1300mAh

 乾電池をよく見ると使用推奨期限が書いてあります(写真3).この期限を越えた電池は,使っていなくても劣化していて,放電容量が仕様で規定されたものより少ない可能性があります.また電池には保管条件も規定されています.劣悪な環境下に長時間放置された電池は有効期限内でもある程度自己放電が進んでいるため,放電容量は仕様で規定されたものより少ない可能性があります.

photo03_01.jpg
写真3 FDK製LR6型電池の使用期限の表記
1次電池の場合は大抵,写真のように本体に表示してある.単3形の2次電池の場合は,充放電回数を取扱説明書に記載している場合がある.

 2次電池のカタログには,新品の状態の放電容量が記載されています.充放電を繰り返すと電池はサイクル劣化して放電容量が少なくなります.回路を設計する際は,2次電池がある程度劣化したときの製品の使い勝手も考慮します.

(2)放電および充電電流

 電池の内部抵抗は電池材料に依存します.大電流で充放電させるためには電池の内部抵抗を小さくする必要があります.電池を構成する材料の抵抗値が大きい場合,無理に大電流を流すと,内部抵抗による発熱のため,電池に物理的な損傷や電解液の電気分解などが起こりやすくなります.

 図8に携帯電話の電池パックにおける負荷の大きさごとの発熱量を示します.負荷が大きければ,定抵抗に高負荷をかけていることになるので,発熱量も大きくなります.従って,使用する電池が安全に使用できる負荷範囲を決めて,回路を設計する必要があります.

zu08_01.gif
図8 携帯電話の使用状態による電池パックの発熱量の違い(室温23℃)
電池に対する負荷が大きいほど熱損失は大きくなる.同じ使用時間,同じ負荷でも,発熱が大きくなれば電池の劣化は進行していると考えてよい.

(3)放電(充電)終止電圧

 放電および充電を終了する電圧のことを示します.この電圧より高い,あるいは低い電圧がかかると,活物質の酸化還元反応以外の反応(電解液の分解反応など)が起きて電池の劣化を早めます.決められた電圧範囲内で放電や充電を行う必要があります.

 電池の放電により電圧は終止電圧に向かって低下していきます.これは正極および負極の化学的ポテンシャル・エネルギの低下によるものであり,内部抵抗による電圧降下とは異なる現象です.

 電池メーカのカタログには電池の放電容量が記載されています.終止電圧はそれぞれの電池で異なるので注意が必要です.例えばマンガン乾電池では0.8~0.9V,アルカリ乾電池では0.8~1.0V,ニッケル・マンガン電池では0.9~1.0V,ニッケル水素電池では1.0Vなどとカタログに記載されています.

 電池で動作する電子機器には電池の消耗状態を示すインジケータや充電の終了を示す表示器などが付いています.安心して電池を使うためには,使用する電池の特性に合わせてこれらを設計していく必要があります.2次電池を利用する機器では,充放電を繰り返すことによって生じる電池のサイクル劣化を考慮して設計する必要があります.

(4)放電深度

 一般に,2次電池の定格容量に対する放電量の比を放電深度といいます.例えば1000mAhの定格容量に対して,700mAhで放電したとすれば70%の放電深度ということになります.一般に,浅い放電深度で使用した方が2次電池の寿命は長くなります.深い放電深度で充放電を繰り返すと,極端に2次電池の公称寿命より短くなります.従って,2次電池のカタログに書かれている電池容量より少ない放電量で充放電した方が,より長い間2次電池を使えます.

 ハイブリッド自動車では高額な電池の寿命を長くするために,放電深度を浅くして使われています.電池だけで動く電気自動車では,放電深度を深くして使わなければならないため,このような使い方に耐える新たな電池を開発する必要があります.

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