実験で学ぶ電池の基礎 ―― モバイル機器を安全に設計するために知っておきたい
写真2にフラッシュ・メモリを使ったポータブル音楽プレーヤに入っているリチウム・イオン2次電池を分解した例を示します.大きく分けて以下の4種類の材料が入っています.
集電体,活物質,電解液,セパレータの四つに分けられる.
- 電子回路に電子を取り出すための正極および負極の金属板(集電体)
- 化学反応に必要な活物質(電気をためる物質)
- 電池内部のイオン伝導に必要な電解液
- 正極と負極がショートしないためのセパレータ
この4種類の材料構成は,19世紀はじめに英国人のダニエル(John Fredric Daniel)によって実用化された電池のころから基本的には変わっていません.
● 電池の種類
電池は,充電が可能かどうかによって1次電池(充電不可)と2次電池(充電可)に分類されます.1次,2次と順番になっているのは,2次電池が発明された当時はまだ実用的な発電機がなく,1次電池を2次電池につないで充電したからだといわれています.
現在,数多く使われている1次電池は,電解液を吸液体やセパレータに含ませ,電池をどのような向きにおいても液漏れしない「乾電池」となっています.一方,電解液に電極を浸している電池は「湿電池」と呼びます.電池の長い歴史の中では傾けると液がこぼれる湿電池が先に発明されて,それが改良されて乾電池が作られるようになりました.
ここでは電池の原理の違いで分類した.さまざまなパッケージが存在するので,市場で見られる電池は非常に多くなる.
2次電池は,バッテリ上部に栓が付いている自動車用鉛蓄電池などの開放型と,携帯電話やデジタル・カメラなどに使われる密閉型に分類されます.密閉型は,液漏れしない工夫がしてあります.図2に代表的な1次電池と2次電池の一覧を示します注1.
注1;燃料電池は水素と酸素を外から供給し続けることで電気を取り出せるシステムであり,電池というよりは反応装置という表現の方が正しいので今回はあえて割愛した.このほかにも太陽電池や土星探査衛星カッシーニに搭載された原子力電池などの物理電池は,電気化学反応を利用していないので,ここでは省いた.