「三菱i-MiEVエボ」がデモ走行,レーシング・カーはEVが主役になるかもしれない!? ―― 全日本袖ヶ浦EV50Kmレース大会(4)

真野 もとき

tag: 電子回路

レポート 2012年6月28日

 

 

 今朝,この袖ヶ浦レースウェイに着いたとき,駐車場に赤いレーシング・カーが止まっていた(写真1).何か見たことがあるぞと思っていたら三菱自動車のi-MiEV Evolutionだという.そうだ,2,3カ月前に新聞に出ていたEVレーシング・カーだ.7月の米国パイクスピーク・レースに,三菱自動車はこのEVで参戦すると発表していた.

 

写真1 駐車場に止まっていたi-MiEV Evolution

※ 本記事の写真をマウスでクリックすると拡大します

 

 

 この日のレースの合間にi-MiEV Evolutionがデモ走行を行う,と場内放送があった.実際に走る姿が見られるというのはラッキーだ.しかも,実際のレース・ドライバとなる増岡 浩 氏が搭乗するという.増岡 浩と言えば,かつて2連覇を達成した日本を代表するダカール・ラリーのドライバではないか.

 

●「雲に向かう」と言われるパイクスピーク・レース

 毎年7月にロッキー山脈のパイクスピークという山で開催されるパイクスピーク・レースは,正式名称をPikes Peak International Hillclimbという.第1回が1916年(大正時代)というのだから,長い歴史がある自動車(4輪/2輪)レースなのだ.昨年の4輪/2輪のエントリ総数は194だった.

 このレースの特徴は,スタート地点が標高2,862mで,そこからゴールの標高4,301mまで19.99kmの距離を一気に駆け上がるというところだ.高地なので当然空気が薄く(しかも標高差が1,439mもある!),エンジン車にとって過酷なレースとして有名だ.エンジンだけではない.ドライバやスタッフも(そして取材者も)高山病や寒さとの戦いで超過酷!らしい.

 レースは4輪/2輪だけでなく細かくクラス分けがされていて,それぞれで優勝が決まる.日本のチームが多く優勝しているレースとしても有名だ.ちなみに,昨年までの同コースの最高記録は,2011年大会でドライバの田嶋 伸博 氏(通称 モンスター田嶋)がスズキSX4を改造したヒルクライム・スペシャルで達成した9分51秒278だ(モンスター田嶋はこれで総合優勝5連覇達成).

 実は何年か前から,このコースは空気が薄いのでエンジン車の調整は難しいが,酸素密度に関係ないEV車は有利だ,と言われている.毎年,「今年はEVが記録を塗り替えるかもしれない...!?」という話がでているらしい.当然,数年前からEVクラスが用意されている.その記録は,昨年の同クラスで優勝した日本の横浜ゴムのチームがThe EV Sports Concept HER-02というオリジナル・カー(ドライバは塙 郁夫 氏)で達成した12分20秒084である.まだガソリン車とは記録に差がある.もちろん,寒すぎるとEVが有利とは言えないし....

 

●日本は5チームがパイクスピーク・レースに参加

 今年も7月3日~8日にパイクスピーク・レースが行われる.今年の話題はなんといっても,5連覇を達成しているモンスター田嶋が,チームAPEVからオリジナルの新型EVレーシング・カーで参戦することである.モンスター田嶋は総合優勝6連覇を狙えるのだろうか,と注目を浴びていた.それだけではない.今年の同レースのEVクラスでは,日本のチームが多数参加する.参加チームの概要は次のとおり.

  • 三菱自動車,i-MiEV EVOLUTION,監督/ドライバ:増岡 浩 氏
  • 三菱自動車,Mitsubishi i(i-MiEVの北米向け市販車),監督:増岡 浩 氏
  • チームAPEV,モンスタースポーツE-RUNNERパイクスピークスペシャル,総監督:福武 總一郎 氏,ドライバ:田嶋 伸博 氏(写真2
  • チーム・ヨコハマ・EVチャレンジ(横浜ゴム),HER-02(EVクラス3連覇を目差す),ドライバ:塙 郁夫 氏(写真3
  • トヨタ(ドイツ・トヨタ・モータースポーツ),TMG EV P002,総監督:哀川 翔 氏,ドライバ:奴田原 文雄 氏(写真4

というように,自動車メーカ,タイヤ・メーカ,電気自動車普及協議会(APEV)のチームが参戦するという興味深いレースとなっている.

 

写真2 モンスタースポーツE-RUNNERパイクスピークスペシャル

チームAPEVのホームページから,ただしボディのカラーリングする前の姿.

 

 

写真3 横浜ゴム・チームのHER-02

昨年のEVクラス優勝カー.

 

 

写真4 TMG EV P002

TMGはトヨタの子会社.

 

 

●モータの最大出力をアップし,合計3基使用

 さて,i-MiEV Evolutionは,日本で市販されているi-MiEVとは似ても似つかぬ車体なのだが,なぜi-MiEVという名称なのか.それは,モータや電池などの主要部品について,市販のi-MiEVで使っているものを使用しているからだという.

 とはいっても,もちろん市販車そのままではない.モータは,市販のi-MiEVに採用されている明電舎製の永久磁石型同期モータY4F1(最大出力47kW)を最大出力80kWにアップさせ,3基(前輪1基,後輪2基.ただし4駆方式)使用している(市販車では後輪駆動1基のみ).搭載電池も市販のi-MiEVで使用している35kWhのGS湯浅製の電池モジュールをそのまま使用しているとのこと.3基のモータを回すだけでも「大丈夫か?」と心配になるが,19.9kmを走りきればいいのだから,これで問題ないのだろう.もちろん車体はパイプフレーム構造+炭素強化プラスチックで,外形寸法は全長4,341mm×全幅1,900mm×全高1,339mmと,市販車とはまったく異なる(写真5).

 

写真5 7月のパイクスピーク・レースに参加するi-MiEV Evolution

 

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