1+1を10にする「チーム力」養成講座 ―― 意見を戦わせより良い成果を生み出そう
● 4行日記
筆者のチームの成長に大きな効果を上げているのが,この「4行日記」です.「4行日記」とは,小林惠智氏の著作で紹介されているもので,以下の四つの枠組みを利用した日記です(2).
・事実
・発見(気付き)
・教訓(学び)
・宣言
筆者のチームでは毎日この4行日記を書いて,チーム・メンバで共有しています(図8).前述した通り,私たちの開発はより高度で複雑な課題に囲まれています.そのような開発に向き合っているので,毎日,何かしらの新しい発見があるでしょう.もしくは失敗もあることでしょう.それらをノウハウとしてチーム・メンバの間に流通させ,明日の開発に,ほかのメンバに生かしていければ,チーム全体としてより高度な課題に取り組むことができます.また,一つの出来事を複数のメンバの視点でとらえることにより,考え方の偏りに気付く効果もあります.
図8 4行日記の例
この「4行日記」は開始当初,「気付き」と「学び」に重点を置いていました.しかし1年たった時点で,予想外の効果に気付きました.それは「宣言」がチームに「意志の力」をもたらしていることです.何かを実現したいというモチベーションは,個人の内側からわき上がるものです.他人が直接に働きかけられるものでもなく,自分でさえコントロールできるのか分かりません.それが,チーム・メンバの意志に触れることで,新しい意志が生まれていたのです.
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ここまで,チームの力を発揮して開発を進める考え方と,筆者のチームにおける実践例を紹介してきました.これを読み終えた皆さんに,ぜひ実践していただきたいことがあります.まず,皆さんのチームで,今,必要としていることを感じることです.
皆さんの開発チームでうまくいっていることは何でしょうか.当然のごとく行われていることで,おかしいと感じていたこと,心配になっていたことはありませんか.少し時間をとり,くまなく洗い出してみてください.そして,そのことについて思うことや考えることを,チーム・メンバとじっくり話し合ってください.チームの良い点をさらに伸ばすために,チームの改善点を克服するために,本章を活用していただければ幸いです.
参考・引用*文献
(1)篠田義明;ビジネス文完全マスター術,角川書店,2003年9月.
(2)小林惠智;一日5分奇跡を起こす4行日記,オーエス出版,2002年11月.
(3)組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST);SWEST7 分科会「SWEST しゃべり場」議事録
あなだ・けいじゅ
キャッツ(株)
<筆者プロフィール>
穴田啓樹.PHP認定ビジネス・コーチ.メーカで組み込み開発に携わる傍ら,設計文書の改善に力を入れる.その後,プロジェクトを任されるようになるとコミュニケーションの影響の大きさに気付き,コーチングやファシリテーションを普段の開発で実践する.2005年にキャッツに入社し,新組織を設立.車載ソフトウェアの検証に向き合っている.