電気電子製品の環境規制に関する最新動向 ――世界に広がる環境規制は情報の共有化や分析手法の標準化で乗り越える
● 化学物質の管理・分析は業界全体で行うべき
電子機器は数百から数千点の部品点数から構成されています.また,一つの部品もいくつかの物質から構成されており,RoHS規制物質のありなしを判定するのは,膨大な作業であることが想像できると思います.電気・電子機器メーカは,最終製品を構成するサプライ・チェーン全体で,RoHS規制物質の管理や環境負荷分析を行うことが必須となっています.
RoHS指令対応が始まる以前から環境マネジメントの一環としてISO
14001などの標準規格の認定を取得するなど,環境経営戦略の一環として環境負荷の低減に取り組んでいる企業は多く,1990年代終わりごろから一般的にグリーン調達という環境への負荷が低い部材を調達する取り組みが行われてきました.これに加えて,RoHS指令への対応では,サプライ・チェーンである機器メーカから部品メーカ,部品メーカから材料メーカに対し,含有される化学物質の成分表や分析データ,規制物質の含有量証明書などの提出を要求する傾向があります.
RoHS規制の解釈や取り組みはメーカによって温度差があり,さまざまな要求も出ていました.日本では化学物質管理の効率の良い手法をサプライ・チェーン全体で共有するために,2001年ごろから,管理項目やグリーン調達の対象物質,環境負荷分析方法などを標準化する動きがありました.機器メーカとそのサプライヤなどを含む86社6団体(2006年4月現在)が参画するグリーン調達調査共通化協議会,いわゆるJGPSSI(Japan Green Procurement Survey Standardization Initiative)では,調査管理対象となる化学物質や調査フォーマットを検討し,2003年に共通ガイドラインとして29物質群を対象(現在は24物質群)として,調査用フォーマットを統一し,データのやり取りに利用できる無償の推奨ツールを作成しました.その後この活動は,米国電子連合会(EIA:Electronic Industries Alliance)や欧州情報通信技術製造者協会(EICTA:European Information and Communications Technology Industry Association)などの海外業界団体と共同で標準化を推進し,2005年5月26日にJGPSSIとEIA,そして半導体業界の標準化団体JEDECとの合意により,ジョイント・インダストリ・ガイドライン(JIG:Joint Industry Guideline)を発表しました.JGPSSIはJIGに対応したグリーン調達調査と,マネジメント体制のガイドラインの二つを国際標準にすることを目ざし,国際電気標準会議であるIEC(International Electrotechnical Commission)に提案しています.