電気電子製品の環境規制に関する最新動向 ――世界に広がる環境規制は情報の共有化や分析手法の標準化で乗り越える
次に分析機器を用いて測定します.図3にその流れを示しています.まずは規制6物質の元素について,蛍光X線装置を用いてスクリーニング分析を行います.蛍光X線分析の原理を図4に示します.図4のように被測定物にX線を照射すると,被測定物に含まれる元素特有の蛍光X線が発生します.この蛍光X線を検出器で検出し,エネルギーから元素の種類を,X線の強さから元素の濃度を算出します.規制6物質のうち,鉛(Pb),水銀(Hg),カドミウム(Cd)は元素そのものなので蛍光X線分析でそのまま測定できます.しかし,六価クロム(Cr6+)はイオン物質であり,ポリ臭化ビフェニル(PBB)やポリ臭化ジフェニル・エーテル(PBDE)は化合物ですから,蛍光X線分析では,総クロム(Cr),総ブロム(Br)までしか測定できません.
図3 RoHS対応物質の分析フローおよび分析法
まずは規制6物質の元素について,蛍光X線装置を用いてスクリーニング分析を行う.
図4 蛍光X線分析の原理
被測定物にX線を照射すると,被測定物に含まれる元素特有の蛍光X線が発生する.この蛍光X線を検出器で検出し,エネルギーから元素の種類を,X線の強さから元素の濃度を算出する.
続いて詳細分析に移ります.詳細分析は,蛍光X線分析でOKやNGと判定できない場合や,イオン物質や化合物の判定を行うものであり,さまざまな分析手法があります.スクリーニング分析と詳細分析には,それぞれメリットとデメリットがあります.スクリーニング分析の事実上の業界標準である蛍光X線分析は,試料の調整,測定時間の簡便性で優れています.しかし,詳細分析と比べると定量性に乏しい面があります.また,精密分析法では,試料を化学薬品を使い完全に溶かし,さまざまな分析装置を使って測定します.精密分析法は優れた定量性をもっている一方,試料の前準備が必要であり,結果算出までに時間を要します.それぞれの分析法の特徴を理解し,実際の運用に反映することが重要です.