電気電子製品の環境規制に関する最新動向 ――世界に広がる環境規制は情報の共有化や分析手法の標準化で乗り越える
● EU,日本,中国における環境規制の動向
(1) 2006年7月1日に施行されたRoHS指令
RoHS指令とは,電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令です.2006年7月1日以降,表1に示すような鉛(Pb),水銀(Hg),カドミウム(Cd),六価クロム(Cr6+),ポリ臭化ビフェニル(PBB),ポリ臭化ジフェニル・エーテル(PBDE)の6物質を,一部の例外を除きEU市場に「上市」される電気電子機器に最大許容濃度を超えて含んではいけないという内容です.上市とは,EU域外から製品や部品が輸入される場合は,通関時点を指し,EU域内に製造拠点をもつ場合には,域内の工場から出荷され,販売店を含む別拠点に入荷した時点を言います.
規制対象物質 | 最大許容濃度 | 影響度 |
鉛(Pb) | 0.1% (1000 ppm) | 貧血,食欲不振,頭痛など |
水銀(Hg) | 0.1% (1000 ppm) | 水腫,腎障害,皮膚/目への刺激,運動失調など |
カドミウム(Cd) | 0.01% (100 ppm) | 肝臓・腎臓障害,目への刺激,食欲、不振など |
六価クロム(Cr6+) | 0.1% (1000 ppm) | 皮膚/粘膜の潰瘍,気管支炎,腎障害など |
ポリ臭化ビフェニル (PBB) | 0.1% (1000 ppm) | 内部記憶力の減衰,中枢神経症状, 甲状腺ホルモンかく乱作用など |
ポリ臭化ジフェニル・ エーテル(PBDE) | 0.1% (1000 ppm) | 甲状腺ホルモンかく乱作用など |
表1 RoHS指令による規制対象物質とその最大許容濃度
EUでは,このRoHS指令より約1年前の2005年8月13日にWEEE指令(Waste Electrical and Electric Equipment;電気電子機器の回収・リサイクルを進める指令)が施行されています.WEEE指令は電気電子製品の廃棄,リサイクルに関するものです.これら二つの指令は別々なものではなく,RoHS指令はWEEE指令の一部であり,セットで運用される環境規制になっています.