電気電子製品の環境規制に関する最新動向 ――世界に広がる環境規制は情報の共有化や分析手法の標準化で乗り越える

八甫谷明彦

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技術解説 2006年12月27日

● 研究が続けられる環境代替技術──鉛フリーはんだは対応が一巡

 規制6物質の代替技術は各企業や研究機関で研究,開発され,採用に至っています.ここでは電気電子機器に不可欠なはんだ中の鉛(Pb)の代替技術について紹介します.従来,電気電子製品内部のプリント配線板と電子部品の接続には,鉛とすずの合金であるはんだが長年使用されてきました.これは資源が豊富なため低コストであり,融点が183℃と低いのではんだ付けの際に電子部品に対して熱のダメージが少なく,扱いやすいといったメリットがあったからです.しかし,鉛入りのはんだは,製造過程や使用時には問題はないのですが,埋め立て地などに廃棄された製品から酸性雨により鉛が流出して河川や地下水を汚染し,それが動植物の体内に蓄積され,やがては人体にも悪影響を及ぼす危険性がありました.そこで鉛を除いた鉛フリーはんだの開発が進められ,さまざまな組成の合金が検討されました.開発のポイントの一つとして,いかに鉛とすずのはんだの融点に近づけるか,つまり,どこまで低融点化が可能かという観点で材料開発が進められました.その結果,いくつかの組成が採用に至っていますが,現在はすず,銀,銅の合金が事実上の業界標準として採用されています.この合金の融点は220℃付近であり,従来の鉛入りはんだより,30℃から40℃も融点が高くなっています.この高融点に対応するため,電子部品やプリント配線板,製造設備も耐熱性を向上させてきました.また,そのほかの課題に対しても,製品や部品,材料,プリント配線板,製造設備の各メーカや大学,学会,協会などが連携を密にして取り組み,鉛フリー化を達成してきました.世界の中でも日本はこの技術への対応は早く,2004年度末には多くのメーカが対応完了と発表しています.

参考・引用*文献
 (1) 青木正光;世界の環境規制動向の背景とその対応状況,エレクトロニクス実装学会誌,vol.8 no.5,pp.370-377,2005年8月号.
 (2) 片岡功;RoHS指令等各国有害物質規制の最新状況,JEITA鉛フリー化完遂緊急提言その後の活動報告書,pp.17-43,2006年4月.
 (3) W.ARAKI,K.MIZOROKI,M.OKI and M.TAKENAKA;Test Method for the Presence or Absence of Pb in Electrical Components Using Energy-Dispersive Micro X-ray Fluore-scence,日本分析化学会HP-学会誌 Analytical Science,vol.21 no,7,p.869,2005年7月号.
 (4) WEEE&RoHS研究会;よくわかるWEEE&RoHS指令とグリーン調達,日刊工業新聞社.
 (5) エスアイアイ・ナノテクノロジーのホームページ.http://www.siint.com/technology/xrf_analysis.html (蛍光X線に関する解説)


はっぽうや・あきひこ (株)東芝 PC&ネットワーク社
<筆者プロフィール>
八甫谷明彦.東芝 PC&ネットワーク社 PC開発センター 実装開発センター所属.現在,ノート・パソコンやハード・ディスクなどディジタル機器のプリント配線板,実装技術の開発および物理化学分析,環境負荷分析に従事している.

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