マルチプロセッサで実現したH.264ビデオ・デコーダ ――コンフィギャラブル・プロセッサのユーザ定義命令とオンチップ・バスを活用
● ホモジニアスとヘテロジニアス
マルチプロセッサ・システムを別の観点から眺めると,
- 同一プロセッサ・コアによる構成(ホモジニアス)
- 異なるアーキテクチャのプロセッサ・コアによる構成(ヘテロジニアス)
の二つのアーキテクチャがあります.
ホモジニアスなマルチプロセッサには,タイルのようにプロセッサ・コアを並べて,同一プログラムを実行するネットワーク・プロセッサの設計例などがあります.タイプ的にはデータ分割というケースが多く,複数のデータを同時処理することで処理能力を上げています.
ヘテロジニアスな構成には,携帯電話に搭載されるCPUとDSPのコンボ・チップなどがあります(図1を参照).ヘテロジニアスなシステムは,解決しようとする問題に最適なアーキテクチャのプロセッサを用います.しかし,プロセッサ間のインターフェースや開発ツールの問題などを考えると,ホモジニアスな構成と比較して複雑になる傾向があります(コラム「マルチプロセッサ・コアLSI開発の憂うつ」を参照).
ホモジニアスとヘテロジニアスの両方からなるマルチプロセッサ・システムも存在します.例えばハイエンドのゲーム用グラフィックス・チップでは,ピクセル・レベルの演算にホモジニアスなマルチプロセッサ構成をとりつつ,それにサラウンド・サウンドなどの高度なオーディオ・プロセッサを付加したチップが開発されています.
● オンチップ・ネットワークが難しい
LSI製造技術や開発ツールの進化により,大量のゲート(トランジスタ)を搭載したLSIを開発できるようになりました(注1).
注1;可能とは言っても,コストや消費電力など,技術的,ビジネス的に解決しなくてはならない課題は山ほどある.