組み込みシステム設計者のためのLIN2.0マイコン実装術(前編) ――プロトコル仕様を正しく読みこなすコツ
"CONCEPT OF OPERATION"の章には,ほぼLIN 1.3と同じ内容が記述されています.図5に,LINバスを介したマスタ・ノードとスレーブ・ノードの接続のようすを示します.マスタ・タスクはフレーム・ヘッダを送信するものであり,スレーブ・タスクは(ヘッダを受信して)レスポンスを送信するものです.図5に示したようにマスタ・ノードにもスレーブ・タスクは実装されるので,マスタ・ノードのスレーブ・タスクがレスポンスに相当する部分をヘッダに続いて送信することもあります.その場合,指定されたスレーブ・ノードはマスタ・ノードからのデータを受信するだけの動作となります(図6).
この章では,最後に重要な記述があります.マスタ・タスクはスケジュール・テーブルというものに基づいてフレームを伝送するという内容です.すなわち,LIN 2.0はタイム・トリガ・プロトコルであることが明記されています. なお,一つのLINクラスタは一つのマスタ・ノードと一つ以上のスレーブ・ノードから構成されます.また,LINドライバはマスタ・タスクとスレーブ・タスクから成り立ちます.単に「マスタ」,「スレーブ」と言ったとき,LINではノードのことを指す場合とタスクのことを指す場合があります.混乱しないように注意しましょう.
図5 マスタ・タスクとスレーブ・タスク
マスタ・ノードにはマスタ・タスクとスレーブ・タスクを実装する.スレーブ・ノードにはスレーブ・タスクのみ実装する.
図6 マスタ・スレーブ間通信
マスタ・ノードのスレーブ・タスクがレスポンスに相当する部分をヘッダに続いて送信する場合,(a)のように指定されたスレーブ・ノードはマスタ・ノードからのデータを受信するだけの動作となる.