組み込みシステム設計者のためのLIN2.0マイコン実装術(前編) ――プロトコル仕様を正しく読みこなすコツ
1.Specification Packageを読み解くポイント
Specification PackageにはLINプロトコルの概要が記述されています.最初のポイントは"FEATURES AND POSSIBILITIES"という章です.この章には,LIN 2.0のおもな特性が記述されています(表1).また,Specification Packageの最後の章で解説されていますが,ここではLINに関連する用語をまず押さえておきましょう.表2に用語の意味をまとめておきます.本稿を読み進めるうえで参考にしてください.
表1 FEATURES AND POSSIBILITIESの内容
記載されている特性
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内容(LIN 1.3との比較)
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single master with multiple slaves concept | LIN 1.3からの変更なし.LINのネットワーク・クラスタは,一つのマスタ(親機)に 複数のスレーブ(子機)がつながる形態をとる.既存のUARTを利用する小規模で低 コストのネットワークを基本としている |
low cost silicon implementation based on common UART/SCI interface | |
self synchronization without a quartz or ceramics resonator in the slave nodes | ボーレート補正(クラスタの通信レートに対する誤差補正)に関する記述.LIN 1.3 ではボーレート補正は±15%だったが,LIN 2.0では±14%に変更されている.また, スレーブはマスタのボーレートを自動検出するようになった |
deterministic signal transmission with signal propagation time computable in advance | LIN 1.3では単に"deterministic signal transmission"と記述されていたが,LIN 2.0 では「あらかじめ算定できている信号伝播時間で通信を行う」と,タイム・トリガ・プロ トコルであることが強調されている |
low cost single-wire implementation | LIN 1.3からの変更なし.通常,9,600bps,19,200bpsという通信レートで使うことが 多い |
speed up to 20 kbit/s | |
signal based application interaction | LIN 1.3では明記されていなかった.かといって,とくに新しいしくみが導入された わけではない |
表2 LIN2.0仕様書で使われる用語
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