組み込みシステム設計者のためのLIN2.0マイコン実装術(前編) ――プロトコル仕様を正しく読みこなすコツ
表2 LIN2.0仕様書で使われる用語
用 語
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意 味
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関連する仕様番号
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active mode | 動作状態.cluster(クラスタ)のノードが一つのクラスタとして互いに通信すること | PROT 5 |
bus interface | クラスタにおける物理的なバス・ワイヤに接続されるノードの回路(トランシーバ,UARTなど) | ― |
byte field | LINバスの各データはバイト・フィールドで送信される.バイト・フィールドには,送信されるスタート・ビット/スト ップ・ビットが含まれる | PROT 2.1 |
checksum model | チェックサム・モデルとしては,標準チェックサム(classic checksum)と拡張チェックサム(enhanced checksum)の二 つがある.拡張チェックサムでは保護ID(識別子)も含まれるが,標準チェックサムには含まれていない | PROT 2.1.5 |
classic checksum | 標準チェックサムは,LIN 1.3までのバージョンおよびdiagnostic frame(診断フレーム)で使用される.データ・バイト のみ加算する | PROT 2.1.5 |
cluster | クラスタとは,LINのバス・ワイヤとすべてのノードを指す | ― |
data | LINフレームのレスポンス(response)は1~8バイトのデータを伝送するが,これを総称してデータと呼ぶ | PROT 2.1.4 |
diagnostic frame | 診断フレームは,マスタ・リクエスト・フレームとスレーブ・レスポンス・フレームを指す | PROT 2.3.4 |
enhanced checksum | 拡張チェックサムはLIN 2.0のスレーブ・ノードの通信に使用する.データ・バイトだけでなく,保護IDも含めてチェッ クサムも計算する | PROT 2.1.5 |
event triggered frame | イベント・トリガ・フレームは「代替物」として使用され,複数のスレーブ・ノードがレスポンスできるようにする.関 連する信号がまれに変更される場合に便利 | PROT 2.3.2 |
frame | すべての情報はフレームで送信される.フレームはヘッダとレスポンスからなる | PROT 2 |
frame slot | フレーム・スロットとは,LINバスのフレームを転送するために割り当てられた時間のこと.スケジュール・テーブル における一つの入力に相当 | PROT 2.2 |
go-to-sleep command | スリープ要求コマンドは,強制的にスレーブ・ノードをスリープ・モードにするために発信される特別な診断フレーム | PROT 5.2, API 2.5.4 |
header | ヘッダはフレームのいちばん初めの部分.つねにマスタ・タスクから送信される | PROT 2.1 |
identifier(ID) | 0~63の範囲のフレームのID(識別子)のこと | PROT 2.1.3 |
LIN description file(LDF) | LIN記述ファイルはシステム定義で作成され,開発ツールなどで解析される | CLS,NCL1.1 |
LIN product identification | LIN製品IDは,各LINノードに割り振られた一意の番号 | DIAG 2.4 |
master node | マスタ・ノードにはスレーブ・タスクだけでなく,バス上の全フレーム・ヘッダを送信するマスタ・タスクも含まれる. バス上のタイミングとスケジュール・テーブルを管理する | ─ |
master request frame | マスタ・リクエスト・フレームのIDは60であり,マスタ・ノードによって作成された診断フレームに使用される | PROT 2.3.4, DIAG |
master task | マスタ・タスクはバス上の全フレーム・ヘッダを送信する役目を担う.バスのタイミングとスケジュール・テーブルを 管理する | PROT 4.1 |
message identifier | メッセージIDは,スレーブ・ノードの各フレームが保有する一意の16ビットの番号を指す.ノード設定中にこの番号 は保護IDに関連づけられ,ノードの通常通信に使用される | DIAG2.5.1 |
NAD (node address for diagnostic) |
診断フレームがブロードキャスト送信されると,NADはアドレス指定されたスレーブ・ノードを識別する.NADは物 理アドレスおよび論理アドレスである | DIAG2.3.2 |
node | 車載システムにおいて,大まかに言うとノードはECU(electronic control unit;電子制御装置)のことである.しかし, 一つのECUは複数のLINクラスタに接続される場合がある.このときのノードは,「バス・インターフェース」と言い 換えるべきだろう | ─ |
node capability file(NCF) | NCFは,LINバスから見たとおりのスレーブ・ノードを表す.システム定義で使用 | NCL1.1 |
protected identifier | 保護IDは,6ビットのIDと2ビットのパリティからなる1バイトの値 | PROT 2.1.3 |
publish | 信号(もしくは無条件フレーム)は,かならず一つのpublisherを持つ情報源(送信)ノードのこと.subscribeの反対 | PROT 2.1.4/4.2 |
request | マスタ・ノードは,ノード設定および診断トランスポート層でスレーブ・ノードにリクエストを載せる | DIAG 2.31./3.3.1 |
reserved frame | 予約フレームは,使用されないID(63)を持つ | PROT 2.3.6 |
response | 1) LINフレームはヘッダとレスポンスからなる.「フレーム・レスポンス」とも呼ばれる | PROT 2.1 |
2) ISOリクエスト用の応答メッセージのこと.「診断レスポンス」とも呼ばれる | DIAG 2.3.1/3.3.1 | |
schedule table | スケジュール・テーブルは,LINバス上のトラフィックを識別する | PROT 3, CLS2.5,API2.4 |
slave node | スレーブ・タスクのみを含むノード(つまり,マスタ・タスクを含まない) | ─ |
slave response frame | スレーブ・レスポンス・フレームのIDは61.ある一つのスレーブ・ノードによって作成される診断フレームに使用する | PROT 2.3.4, DIAG |
slave task | スレーブ・タスクはバス上のすべてのフレーム・ヘッダをモニタし,それに応じて対処する役目を持つ.つまり,フレ ーム・レスポンスをpublish(送信)する,もしくはsubscribe(受信)する(あるいは無視する)ということ | PROT 4.2 |
sleep mode | スリープ・モードは,クラスタでまったく通信がない状態を指す(マイコンでいえば,省電力モードと同じ意味) | PROT 5 |
signal | 信号は,信号送信フレームを使用してLINクラスタで送信される値を意味する | PROT 1 |
signal-carrying frame | 信号伝送フレームは,0~59の範囲のIDを持つ.無条件フレーム,スポラディック・フレーム,イベント・トリガ・フ レームが信号伝送フレームになる | PROT 2.1.3 |
sporadic frame | スポラディック・フレームは無条件フレームに類似した信号伝送フレームだが,その信号がpublisherによって更新され る場合のみ,フレーム・スロットで送信される | PROT 2.3.3 |
subscribe | subscribeはpublishの反意語で,信号(または信号伝送フレーム)を受信すること | PROT 2.1.4/4.2 |
system definition | システム定義は,LIN記述ファイルを作成するプロセス | NCL 1.1.2 |
system generation | LIN記述ファイルに対して,クラスタにおいて一つの(またはそれ以上の)ノードをターゲットにするプロセス | NCL 1.1.1 |
unconditional frame | 無条件フレームは,割り当てられたフレーム・スロットにつねに送信される信号伝送フレームを指す | PROT 2.3.1 |
user-defined frame | ユーザ定義フレームのIDは62.用途は仕様でとくに定めていない | PROT 2.3.5 |