組み込みシステム設計者のためのLIN2.0マイコン実装術(前編) ――プロトコル仕様を正しく読みこなすコツ

舘 伸幸

tag: 組み込み

技術解説 2006年1月12日

表2 LIN2.0仕様書で使われる用語

用 語
意 味
関連する仕様番号
active mode 動作状態.cluster(クラスタ)のノードが一つのクラスタとして互いに通信すること PROT 5
bus interface クラスタにおける物理的なバス・ワイヤに接続されるノードの回路(トランシーバ,UARTなど)
byte field LINバスの各データはバイト・フィールドで送信される.バイト・フィールドには,送信されるスタート・ビット/スト ップ・ビットが含まれる PROT 2.1
checksum model チェックサム・モデルとしては,標準チェックサム(classic checksum)と拡張チェックサム(enhanced checksum)の二 つがある.拡張チェックサムでは保護ID(識別子)も含まれるが,標準チェックサムには含まれていない PROT 2.1.5
classic checksum 標準チェックサムは,LIN 1.3までのバージョンおよびdiagnostic frame(診断フレーム)で使用される.データ・バイト のみ加算する PROT 2.1.5
cluster クラスタとは,LINのバス・ワイヤとすべてのノードを指す
data LINフレームのレスポンス(response)は1~8バイトのデータを伝送するが,これを総称してデータと呼ぶ PROT 2.1.4
diagnostic frame 診断フレームは,マスタ・リクエスト・フレームとスレーブ・レスポンス・フレームを指す PROT 2.3.4
enhanced checksum 拡張チェックサムはLIN 2.0のスレーブ・ノードの通信に使用する.データ・バイトだけでなく,保護IDも含めてチェッ クサムも計算する PROT 2.1.5
event triggered frame イベント・トリガ・フレームは「代替物」として使用され,複数のスレーブ・ノードがレスポンスできるようにする.関 連する信号がまれに変更される場合に便利 PROT 2.3.2
frame すべての情報はフレームで送信される.フレームはヘッダとレスポンスからなる PROT 2
frame slot フレーム・スロットとは,LINバスのフレームを転送するために割り当てられた時間のこと.スケジュール・テーブル における一つの入力に相当 PROT 2.2
go-to-sleep command スリープ要求コマンドは,強制的にスレーブ・ノードをスリープ・モードにするために発信される特別な診断フレーム PROT 5.2,
API 2.5.4
header ヘッダはフレームのいちばん初めの部分.つねにマスタ・タスクから送信される PROT 2.1
identifier(ID) 0~63の範囲のフレームのID(識別子)のこと PROT 2.1.3
LIN description file(LDF) LIN記述ファイルはシステム定義で作成され,開発ツールなどで解析される CLS,NCL1.1
LIN product identification LIN製品IDは,各LINノードに割り振られた一意の番号 DIAG 2.4
master node マスタ・ノードにはスレーブ・タスクだけでなく,バス上の全フレーム・ヘッダを送信するマスタ・タスクも含まれる. バス上のタイミングとスケジュール・テーブルを管理する
master request frame マスタ・リクエスト・フレームのIDは60であり,マスタ・ノードによって作成された診断フレームに使用される PROT 2.3.4,
DIAG
master task マスタ・タスクはバス上の全フレーム・ヘッダを送信する役目を担う.バスのタイミングとスケジュール・テーブルを 管理する PROT 4.1
message identifier メッセージIDは,スレーブ・ノードの各フレームが保有する一意の16ビットの番号を指す.ノード設定中にこの番号 は保護IDに関連づけられ,ノードの通常通信に使用される DIAG2.5.1
NAD
(node address for diagnostic)
診断フレームがブロードキャスト送信されると,NADはアドレス指定されたスレーブ・ノードを識別する.NADは物 理アドレスおよび論理アドレスである DIAG2.3.2
node 車載システムにおいて,大まかに言うとノードはECU(electronic control unit;電子制御装置)のことである.しかし, 一つのECUは複数のLINクラスタに接続される場合がある.このときのノードは,「バス・インターフェース」と言い 換えるべきだろう
node capability file(NCF) NCFは,LINバスから見たとおりのスレーブ・ノードを表す.システム定義で使用 NCL1.1
protected identifier 保護IDは,6ビットのIDと2ビットのパリティからなる1バイトの値 PROT 2.1.3
publish 信号(もしくは無条件フレーム)は,かならず一つのpublisherを持つ情報源(送信)ノードのこと.subscribeの反対 PROT 2.1.4/4.2
request マスタ・ノードは,ノード設定および診断トランスポート層でスレーブ・ノードにリクエストを載せる DIAG 2.31./3.3.1
reserved frame 予約フレームは,使用されないID(63)を持つ PROT 2.3.6
response 1) LINフレームはヘッダとレスポンスからなる.「フレーム・レスポンス」とも呼ばれる PROT 2.1
2) ISOリクエスト用の応答メッセージのこと.「診断レスポンス」とも呼ばれる DIAG 2.3.1/3.3.1
schedule table スケジュール・テーブルは,LINバス上のトラフィックを識別する PROT 3, CLS2.5,API2.4
slave node スレーブ・タスクのみを含むノード(つまり,マスタ・タスクを含まない)
slave response frame スレーブ・レスポンス・フレームのIDは61.ある一つのスレーブ・ノードによって作成される診断フレームに使用する PROT 2.3.4, DIAG
slave task スレーブ・タスクはバス上のすべてのフレーム・ヘッダをモニタし,それに応じて対処する役目を持つ.つまり,フレ ーム・レスポンスをpublish(送信)する,もしくはsubscribe(受信)する(あるいは無視する)ということ PROT 4.2
sleep mode スリープ・モードは,クラスタでまったく通信がない状態を指す(マイコンでいえば,省電力モードと同じ意味) PROT 5
signal 信号は,信号送信フレームを使用してLINクラスタで送信される値を意味する PROT 1
signal-carrying frame 信号伝送フレームは,0~59の範囲のIDを持つ.無条件フレーム,スポラディック・フレーム,イベント・トリガ・フ レームが信号伝送フレームになる PROT 2.1.3
sporadic frame スポラディック・フレームは無条件フレームに類似した信号伝送フレームだが,その信号がpublisherによって更新され る場合のみ,フレーム・スロットで送信される PROT 2.3.3
subscribe subscribeはpublishの反意語で,信号(または信号伝送フレーム)を受信すること PROT 2.1.4/4.2
system definition システム定義は,LIN記述ファイルを作成するプロセス NCL 1.1.2
system generation LIN記述ファイルに対して,クラスタにおいて一つの(またはそれ以上の)ノードをターゲットにするプロセス NCL 1.1.1
unconditional frame 無条件フレームは,割り当てられたフレーム・スロットにつねに送信される信号伝送フレームを指す PROT 2.3.1
user-defined frame ユーザ定義フレームのIDは62.用途は仕様でとくに定めていない PROT 2.3.5
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日