つながるワイヤレス通信機器の開発手法(17) ――市場に受け入れられる製品は何かを見極める
3.ワイヤレスの世界でもインター ネット技術が台頭
図3で示したように,ワイヤレスLAN機能を内蔵したモバイル・セントレックス用端末は,一見むだが多いように見える構成だが,この背景にはインターネット技術が大きくかかわっている.
NTTドコモのFOMAに採用されているW-CDMA(広帯域符号分割多元接続方式)や,KDDIのCDMA2000-1xEV-DOなどに対応した第3世代携帯電話の市場はまだ小さく,閉鎖的である(納入先は電話事業者のみであり,総務省から電話番号を付与されないと動作させることはできない)という理由から,対応機器を開発・製造しているメーカの数は今の時点ではあまり多くない.
これに対してワイヤレスLANは,2.4GHzまたは5GHzのISM帯域注1を使うため,通信事業者にかかわる必要も免許を受ける必要もない.携帯電話の場合,開発・製造に必要な仕様などは,通常,携帯電話事業者からしか入手できない注2.一方,インターネットの技術はそのほとんどがWebサイト上で公開されているので,だれでも入手でき,多くのメーカはこれをもとに開発を進めることができる.例えば,モバイル・セントレックス用ではないが,「携帯IP電話」と呼ばれる社内専用のワイヤレスIP電話端末がある(図5).これは,市販のワイヤレスLANカード(SDカード型,CompactFlashカード型など)を利用したIP電話端末である.つまり,無線回路のノウハウがないメーカでも,こうした市場に多く出回っているワイヤレスLANカードを用いることで,IP電話の開発・製造を行えるというわけである.
注1;産業(industry),科学(science),医療(medical)の分野で免許がなくても使用可能な周波数帯.
注2;3GPP(Third Generation Partnership Project)や3GPP2,ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:電波産業会)といった標準化団体が定める仕様など,一般に公開されているものもある.
図5 携帯IP電話
「携帯IP電話」と呼ばれる社内専用のワイヤレスIP電話端末.これは,市販のワイヤレスLANカード(SDカード型,CompactFlashカード型など)を利用したIP電話端末である.