つながるワイヤレス通信機器の開発手法(17) ――市場に受け入れられる製品は何かを見極める
2.多様なシステムが融合する
冒頭で述べたように,この連載を始めた2年前はそれぞれのワイヤレス通信機器は独立して動くように見えていた.例えば,携帯電話には携帯電話の通信方式が,ワイヤレスLANカードにはワイヤレスLANの通信方式が搭載されると考えられていた.しかし,現在のワイヤレス通信機器を見ていると,それは考え違いだったと言わざるをえない.
複数のワイヤレス・システムの融合が始まった理由としては,以下の点が挙げられる.
1) 各通信規格の特徴が明確になり,すみ分けが進んできた
2) 生産量の増加によって部品コストが下がってきた
3) ユーザの利便性を優先させる市場構造になってきた
以下に,ワイヤレス・システムの融合について,前述のモバイル・セントレックス・サービスを例に挙げて説明
する.
最近,筆者はおもにIP(internet protocol)電話に関するしごとに携わっている.IP電話は,フュージョン・コミュニケーションズの「FUSION IP-Phone」やNTTコミュニケーションズの「OCN.Phone」などの個人向けサービスから始まった.最近は,法人向けサービスも始まりつつある.
IP電話は,その名のとおりIPの決まりにのっとって電話サービスを実現する技術である.具体的には,EthernetやTCP/IPなどの技術を用いる.EthernetやTCP/IPを使うことから,ワイヤレスIP電話を企画するとき,ワイヤレスLANの技術を使用することは容易に思いつく.しかし,どうもそれだけではワイヤレスIP電話を商用化することは難しそうだ.
今,もっとも新しい法人向けIP電話のサービスの一つにモバイル・セントレックスというコンセプトがある.これは,個人向けで飽和状態にある携帯電話を法人ユーザにも売り込み,囲い込みを行う意図で各電話事業者が今後広めていこうとしているサービスである.