つながるワイヤレス通信機器の開発手法(17) ――市場に受け入れられる製品は何かを見極める
上記のようにインターネット技術にはいろいろなメリットがあるが,次の2点には気をつけておく必要がある.
インターネットの世界の一つの特徴として,「ベスト・エフォート(best effort)」というものがある.ADSL(asym-metrical digital subscriber line)では,8Mbps,20Mbpsと各プロバイダが通信速度を競っているが,この数値はもっとも状態が良いときの速度であって,環境によってはこの速度を実現できない場合もある.このようなベスト・エフォート型のサービス(保証のないサービス)は,個人利用者には受け入れられるかもしれないが,法人向けサービスの場合は受け入れられるとは限らない.
もう一つ,インターネットでは,盗聴や改ざん,妨害などに対する処置を十分に講じる必要がある.前述のとおり,これまでの携帯電話システムや電話交換システムはその目的のために限られたメーカや業界で作り上げたものなので,当然,外部に対して非公開の部分が多かった.非公開の部分が多いということは,攻撃や妨害に必要な情報を得ることが難しく,結果的に上記のような問題行為を防ぐことになった.しかし,インターネット技術に基づいて構築されたシステムは仕様のほとんどが公開されているため,だれでも攻撃者や妨害者になりうる.インターネットの技術を使用する場合には,これらの点について十分に気をつける必要がある.