つながるワイヤレス通信機器の開発手法(17) ――市場に受け入れられる製品は何かを見極める
モバイル・セントレックス用端末の内部ブロック図を 図3に示す.外観は携帯電話とまったく同じだが,その中には携帯電話用とワイヤレスLAN用の二つの回路やソフトウェアが実装されている.また,このような端末では,音声(アナログ信号)をディジタル信号に変換するCODECや,発信・着信を司る通信プロトコルも携帯電話用とワイヤレスLAN用の二つを備える必要がある.しかし,電話番号を表示したり入力したりする機能や,音声を送受信する機能などのユーザ・インターフェースは,これまで携帯電話に組み込まれてきたものをそのまま使うことができる.
もちろんワイヤレスLANはもともとコンピュータ・ネットワークから登場した規格なので,Webブラウザを使ってホームページを見るためのHTTP(hypertext transfer protocol)や電子メールをやりとりするためのSMTP(simple mail transfer protocol)などのインターネット系プロトコルと相性が良い.つまり,携帯電話におけるインターネット閲覧やメールの送受信といった,今日ではなくてはならないサービスにも十分に対応できる.
このように,モバイル・セントレックスでは,二つの技術(携帯電話,ワイヤレスLAN)が融合して,新しい機器とサービスが誕生する.しかし,電池の持ち時間が短い,パソコンが使用するワイヤレスLANと同じしくみを使用しているためノイズや干渉が生じる,といった問題点はある.また,ワイヤレス・システムに付きまとう,アクセス・ポイントの設置場所や必要台数の問題についても,今のところ簡単な解決策がないため,法人向けサービスをすぐに立ち上げられるかどうか疑問視されている.
図3 モバイル・セントレックス用端末
外観は携帯電話とまったく同じだが,その中には携帯電話用とワイヤレスLAN用の二つの回路やソフトウェアが実装されている.