つながるワイヤレス通信機器の開発手法(17) ――市場に受け入れられる製品は何かを見極める
● 電車賃もゲーム代も携帯電話で支払う
最近,携帯電話にRFID(radio frequency identification)タグを付けて電車の定期券や切符の代わりに使えるようにしたものが発売されている.いつも持ち歩いている携帯電話が定期券代わりになれば,なにかと便利であるが,こうしたユーザの利便性以外にも利点が隠れている.
例えば,紙の切符や定期券は自動改札で目詰まりしやすく,混雑の原因になる.また,目詰まりを起こすたびに駅員や保守会社が対応するため,費用が高くつき,鉄道会社の負担が大きくなる.
携帯電話に定期券やそのほかの料金回収機能が備わった場合,その料金は電話事業者が携帯電話料金とともに携帯電話の使用者から回収して,鉄道会社などに振り込むということが考えられる.このとき,電話事業者は小額代金回収手数料として,鉄道会社からいくらかの収入を得ることができる.iモードのコンテンツ使用量の回収と同じやりかたである.
業務用ゲーム機のメーカも,このようなしくみを導入することを検討している.これまで,業務用ゲーム機では1ゲーム当たりの料金はほとんどの場合が100円(1コイン)だった.例えば5%の消費税率が上昇したり,ゲーム・コンテンツの開発費やゲーム機器自体の価格が上がった場合,料金を100円刻みで上げていくか(ユーザにとっては割高に感じる),100円の収入の中でやりくりしなければならない(ゲーム・センタの経営側にとってはトータルの収益が下がる).ここでRFIDタグなどを用いて料金を徴収するしくみを導入すれば,110円とか105円といった細かい刻みの料金回収が可能となる.
関係者にとってメリットが多い製品(あるいはシステム)ほどヒットする可能性が高い.携帯電話に組み込まれる新しい技術についても同じことが言える.今後,技術的には,たいていの機能を携帯電話に組み込めると思う.しかし,それがユーザに受け入れられるかどうかは別の問題である.製品企画は技術者のひとりよがりから生まれるものではなく,多くの人が喜ぶところから生まれなくてはならない.