ネットワーク・プロセッサを使ってネットワーク・ボードを開発する ――電源回路設計の留意点とボード実装時のトラブル対策
4) フラッシュ・メモリのアクセスの不ぐあい
使用したIntel社製のフラッシュ・メモリのバージョンアップによって不ぐあいが起こるケースがありました.具体的には,フラッシュ・メモリへの書き込みができなくなるという不ぐあいです.デバイスIDが変わったために起きた現象ですが,購入したフラッシュ・メモリが変更されたということに気がつくまでに,かなりの時間がかかりました.
なお,上記のトラブルは「参考例」としてとらえてください.その理由は,執筆時点(2004年6月現在)ではIXP425自体のステッピング変更とドキュメントの整備によって解決策が提示されているからです.そこで,これから本プロセッサを使用される方に注意していただきたいのが,設計するうえで必要な資料(XP425/IXC1100 Datasheet,Developer's Manual,Design Guide,Spec Update,Application Note,Technical Adversary)注2をかならず確認することと,本プロセッサについてはB0ステップを使用するということです.資料の中でもとくにDesign Check Listは,ハードウェア設計上の注意点がリストになっています.最終的に基板を作製する前にチェックすることをお勧めします.
最後に,まだ公式には解決案が提示されていない不ぐあいの例を一つ挙げておきます.SDRAMを使う場合の注意点です.これは,初期のIXP425(A0ステップ)にあったものとは別の不ぐあいです.Redboot(組み込みLinux向けのブート・ローダ)でSDRAMを初期化する際,規定時間を266MHzのクロック周波数で計算しているため,533MHz版のIXP425を使用した場合,初期化エラーが起こる可能性があります.これはRedbootのサイクル数をクロック周波数に応じて変更すれば解決できると思われます.
回路の問題ではないのですが,おそらくこの現象が起きると最初に疑われるのは回路そのものだと思います.頭の片隅に置いておいてください.
注2;これらの資料はIntel社のホームページから入手可能である.URLは「http://www.intel.com/design/network/products/npfamily/docs/ixp4xx.htm」.
参考・引用*文献
(1) 総務省のインターネット接続サービス利用者数等の推移に関する資料,http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040531_2.html
(2) Intel;Intel IXP4XX Product Line of Network Processors and IXC1100 Control Plane Processors Developer's Manual.
(3) Intel;Intel IXP4XX Product Line of Network Processors and IXC1100 Control Plane Processor Datasheet.
(4) Intel;Intel IXP4XX Product Line of Network Processors and IXC1100 Control Plane Processor Hardware Design Guidelines.
(5) Intel;Intel IXP4XX Product Line of Network Processors and IXC1100 Control Plane Processor Specification Update.
(6) Intel;Intel IXP400 Software Programmer's Guide.
(7) Interface編集部編;Tech I Vol.14 PCカード/メモリカードの徹底研究,CQ出版,2002年10月.
はやし・ゆきお
ノバテック(株)
<筆者プロフィール>
林幸雄.化学科卒で化学系メーカに就職したが,なぜか回路設計エンジニアになる.外資系ベンチャを経てノバテックに入社.苦手なソフトウェアを克服するため日々精進中.