ネットワーク・プロセッサを使ってネットワーク・ボードを開発する ――電源回路設計の留意点とボード実装時のトラブル対策
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◆ディジタル家電への搭載を目ざして小型化◆
IXP425は「ネットワーク・プロセッサ」という位置づけから,おもにブロードバンド・ルータに搭載されています.しかし,低消費電力であることや高いCPU性能を持つことなどから,筆者らはほかの分野で利用することを考えました.いわゆる「組み込み機器」の分野です.
実際に開発したのが写真A-1に示す「NTNP425C」です.本ボードの開発には,「ネットワーク・プロセッサ」という少し高く見られがちな敷居を下げて,一般の組み込みCPUと同じように扱ってみよう,という意味合いがありました.
本ボードの特徴は,本プロセッサの機能を損なうことなく,外形寸法を105mm×75mmと小型化した点です.本ボード単体でルータ機能などを実現できますし,本プロセッサの信号線がコネクタに出ているので,拡張ボードという形でユーザ独自の機能を追加することもできます.逆に,ユーザ・システム自体はいじらずにセキュアなネットワークを構築するためのアダプタとして利用するということも考えられます.
本ボードの応用分野としては,FA(factory automation)系の制御ユニットやディジタル家電などでのネットワーク処理が挙げられます.とくに,ディジタル家電では著作権などの問題があり,ネットワークを流れるデータの保護といったことが重要になります.その際に本ボードを使用すれば,IPSec(暗号通信におけるセキュリティ規格)など,負荷の大きい処理を分散実行でき,システムのメインCPUにそれほど大きな変更を加えなくてもよいといったメリットがあります.
組み込み機器にネットワーク機能を追加する場合,これまでは外付けのLANコントローラLSIを載せるのが一般的でした.ディジタル家電などでもネットワークへ接続する例が増えていることから,これからはLANコントローラ内蔵CPUが利用されていくのではないかと,筆者は予想しています.
写真A-1 NTNP425Cの外観
組み込み機器向け.外形寸法を105mm×75mmに小型化した.