ネットワーク・プロセッサを使ってネットワーク・ボードを開発する ――電源回路設計の留意点とボード実装時のトラブル対策
● 「ネットワーク・プロセッサ」とは
最近,ブロードバンド・ルータなどのインターネット接続用端末向けの機能を取り込んだ組み込みプロセッサがいくつかの半導体メーカから出荷されています.それらは高スループット,低消費電力といった特徴があり,豊富な周辺機能を含んでいます.ここでは,それらを総称して「ネットワーク・プロセッサ注1」と呼ぶことにします.
ネットワーク・プロセッサということばに厳密な定義はないのですが,筆者らは,
- メインCPU
- ネットワーク処理用のコプロセッサ
- 各種I/O機能および付加機能
を「一つのチップ(またはパッケージ)にまとめたもの」と いう見かたをしています.
チップ内部に実装されているネットワーク処理用コプ ロセッサは10M/100MbpsのEthernetに対応したものがほとんどです(ブロードバンド・ルータ用途では,ギガビットEthernet用インターフェースを内蔵したものはまだ少ない).I/Oはシリアル・ポート,汎用I/Oといったものが代表的ですが,USB機能などを内蔵したLSIもあります.
ここで使われるネットワーク処理用コプロセッサは,単なるMAC(media access control)機能を実現しているだけでなく,メインCPUの負荷を低減させるための機能を持っているものが多いようです.また,最近ではDES(data encryption standard)やAES(advanced encryption standard)などの暗号化・復号化アルゴリズムのハードウェア回路を内蔵し,セキュリティを維持したまま高速に通信できるものが増えてきました.本稿では,その中から米国Intel社の「Intel IXP425 Network Processor(以下,IXP 425と呼ぶ)」を例にとって,実際のネットワーク・ボードのハードウェア設計について説明します.
注1;「ネットワーク・プロセッサ」は,もしかしたらどこかの半導体メーカ の造語なのかもしれない.ただ,「ネットワーク処理に関連した機能を持つCPUなのだろう」ということが連想できるネーミングではないかと思う.