TSMCやIBM社などの製造ラインを使い,1/5~1/10の費用でLSIを試作 ――複数ユーザが1枚のウェハに相乗りして試作コストを低減
半導体の製造では,回路パターンをウェハに焼き付けるために「ステッパ」と呼ばれる露光装置を用います.ステッパは,ウェハ上の約20mm角ほどの領域を繰り返し露光していきます.マルチプロジェクト・ウェハ方式では,この20mm角の領域を複数のLSIに割り当てます.写真1はマルチプロジェクト・ウェハの例です.8インチ・ウェハの場合,1枚のウェハから約40~50個のチップを取ることができます.写真1の例では,約20社の28チップが同一マスクに含まれています.このウェハはチップごとに切り出され,ユーザに納品されます.
マルチプロジェクト・ウェハ方式では,多くの場合,製造のスケジュールがあらかじめ決められています.つまり,「毎月1日と15日にマスク・データを受け渡し」といったぐあいに,決められたスケジュールに合わせて"乗り合いバス"や"シャトル便"が運行されます.スケジュールの融通はきかないので注意してください.
現在,LSIの試作サービスを提供している企業や組織としては,台湾のCIC(Chip Implementation Center)やカナダのCMC(Canadian Microelectronics Corp.),フランスのCMP(Circuits Multi-Projects),欧州のEUROPRACTICE注1,韓国のIDEC(IC Design Education Center),米国のMOSIS,日本のVDEC(東京大学大規模集積システム設計教育研究センター)などがあります.また,台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)注2などのファウンドリ企業も同様のサービスを提供しています.
注1;1995年にEC(欧州共同体)が設立したLSI試作サービスのプロジェクト.ベルギーの研究機関であるIMEC(Interuniversity MicroElectronics Center)などが中心となってサービスを提供している.
注2;台湾のファウンドリ企業であるTSMCは,IPベンダや設計会社などと「CAP(CyberShuttle Alliance Partner)」と呼ばれる提携を結んでいる.
〔写真1〕マルチプロジェクト・ウェハの例
(a)ウェハ
(b)約20mm角領域の拡大図