固定小数点プログラム開発の手間を省ける組み込み機器向けDSPコアを開発 ──15人日でMP3デコーダを開発可能に
●組み込み機器には固定小数点演算プロセッサを使う
実際に演算処理を担当する演算器は,固定小数点演算用と浮動小数点演算用の2種類に分類できます.固定小数点演算器だけを内蔵するプロセッサを固定小数点演算プロセッサ,浮動小数点演算器を内蔵するプロセッサを浮動小数点演算プロセッサと呼びます.
浮動小数点演算は,実際には固定小数点演算の組み合わせによって実現します.浮動小数点演算器は内部に二つの固定小数点演算器と付加回路を含み,付加回路が固定小数点演算の組み合わせを制御します.そのため,浮動小数点演算器は,固定小数点演算も実行できます.演算の実行にかかるプロセッサ・サイクル数はどちらの演算も同じです.
規定ではありませんが,多くの浮動小数点演算プロセッサはデータを32ビット・ワードで表現します.図1(b)のデータ・フォーマットでは,仮数部を24ビット,指数部を8ビットとし,計32ビットです.固定小数点演算プロセッサ,特にDSPでは,通常16~24ビット・ワードを用います.
演算器構成が複雑なこと,さらに一般的な語長が長いことから,浮動小数点演算プロセッサでは演算器やデータ・メモリなどのハードウェア・コストが上昇します.そのため,一般に浮動小数点演算プロセッサは固定小数点演算プロセッサと比べて,実用上かなり不利です.消費電力の点からも同様です.このような理由から,限られたハードウェア・コストの中で高性能が求められるコンシューマ向け組み込み機器,特に携帯機器では,浮動小数点プロセッサが用いられることはめったにありません.