固定小数点プログラム開発の手間を省ける組み込み機器向けDSPコアを開発 ──15人日でMP3デコーダを開発可能に
●手間のかかる固定小数点機能モデルの開発
ターゲット・プロセッサが固定小数点演算プロセッサの場合,プログラミングによって達成可能な信号処理品質が変化します.そこで,信号処理品質を評価するためのモデルを開発する必要があります.このモデルは,浮動小数点機能モデルの算術方式を固定小数点に変換したもので,細かい指数の設定を含んでいます.図3に示した開発フローには,「固定小数点機能モデル」として示しています.
モデル開発者が精度にかかわるすべての部分を人手で設定するため,固定小数点機能モデルの開発にはかなり多くの工数がかかります.また,開発には固定小数点プログラミングの問題点を理解した技術者が必要です.さらにアルゴリズムを決定するために用いたテスト・データを利用して,再度,主観評価を実施する必要があります.このため,固定小数点機能モデルの開発には,複数の技術者で何ヵ月という単位の工数がかかります.
固定小数点機能モデルさえ完成すれば,それをもとにターゲット・プロセッサの固定小数点プログラムを作成することは難しくありません.固定小数点機能モデルをC言語で注意深く記述すれば,モデルをコンパイルするだけでプログラムを生成できるケースもあります.しかし,固定小数点機能モデルの開発そのものにかかる工数と比べると,コンパイラの利用によって削減できる開発工数は大きくありません.