固定小数点プログラム開発の手間を省ける組み込み機器向けDSPコアを開発 ──15人日でMP3デコーダを開発可能に
1.DSP応用プログラム開発の課題
本稿ではプロセッサが用いる算術方式(arithmetic)に着目して,プロセッサを分類します.ディジタル信号処理において重要な算術方式は,固定小数点と浮動小数点です.これらの算術方式がディジタル信号処理において,それぞれどのような役割を果たしているのかを整理し,それを通してアプリケーション・プログラム開発の問題点を明らかにします.
算術方式ということばはあいまいですが,具体的には信号データを表現するデータ・フォーマットと,データに算術演算を施す計算手順ととらえることができます.各算術方式の単純化したデータ・フォーマットを図1に示します.浮動小数点が一つのデータ・ワードを仮数と指数で表現するのに対して,固定小数点は仮数相当部分だけで表現します.