1トランジスタ構成の疑似SRAMは携帯機器分野で開花するか? ――バッテリ寿命,高集積度への市場要求に対する一つの答え
●携帯電話向け「CellularRAM」規格
携帯電話向けRAMは,アクセス時間が70nsのSRAMから低コストで集積度の高い疑似SRAMへと移行してきました.また,疑似SRAMに同期インターフェースを追加することで,第2.5世代や第3世代の携帯電話で要求されるデータ処理速度にも対応できるようになってきました.
CellularRAMは,ドイツのInfineon Technologies社,米国Micron Technology社,および筆者らが共同開発している疑似SRAMです(表1).CellularRAMは,非同期SRAM(初期の6トランジスタ構成のSRAM)やページ・モード疑似SRAMと下位互換性があります.そのため,既設のフラッシュ・メモリ・インターフェースを改造しなくても,ベースバンド処理に使用できます.これがメモリ・サブシステムにおいて,より高速で効率的かつシンプルな設計を求める市場に対する筆者らの解答です.CellularRAMは,低電圧のフラッシュ・メモリと互換性のあるバースト・プロトコルに対応しています.これによって,メモリ・コントローラの設計はかなり簡素化されます.また,CellularRAMには最新の省電力機能が適用されています.
さらに,高集積のDRAM技術を用いてメモリ・アレイを実現しているため,1ビット当たりのコストも今日の6トランジスタ構成のSRAM製品と比べてかなり低くなっています注3.
このメモリの変遷の行き着く先は,低電圧の同期型DRAM(LP SDRAM)への移行です.SDRAMは,もともとパソコンのメイン・メモリとして使用されてきました.そのため,SDRAMは消費電力の低減にあまり主眼が置かれておらず,処理速度の向上だけが追求されてきました.しかし,最近のSDRAMは再設計が行われており,非常に低い電源電圧で高速に処理できるようになっています.そのため,第3世代の携帯電話に使用されることが増えてきました.
注3;CellularRAMについての詳細は,「http://www.cellularram.com/」を参照.
〔表1〕CellularRAMの仕様
疑似SRAM(MoBL3) | CellularRAM | ||
メモリ・コア | 1トランジスタ構成 | 1トランジスタ構成 | |
メモリ・インターフェース | 非同期 | 非同期/同期 | |
SRAM | SRAM/フラッシュ・メモリ | ||
バス・インターフェース | ×16 | ×16 | |
メモリ容量 | 16M/32M/64Mビット | 16M~128Mビット | |
速度 | ランダム | 60ns/70ns | 最大60ns |
ページ | 20ns | 20ns | |
同期 | 52MHz/66MHz | 108MHz | |
Isb | 最大100μA | 最大100μA | |
Icc | 最大40μA |
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電源電圧 | 2.5V/1.8V | 1.8V(2.5V) | |
温度範囲 | -25~85℃ |
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パッケージ | 48/54ピンFBGA | 48/54ピンFBGA | |
外形寸法 | 6mm×8mm×1mm | 6mm×10mm×1mm | |
ターゲット・アプリケーション | 2.5G/3G携帯電話 | 2.5G/3G携帯電話 | |
供給状況 | サンプル出荷中 | 2003年前半 |
Rajesh Manapat
Manoj Roge
米国Cypress Semiconductor社
◆筆者プロフィール◆
Rajesh Manapat.メモリ製品グループのマーケティング・マネージャ.ハイパーキャッシュ・チップセット・グループのアプリケーションズ・グループとSRAM製品グループにかかわり,いくつかの新しいメモリ製品の仕様策定と製品開発に携わってきた.
Manoj Roge.現在,PSRAM製品を重点的に取り扱うメモリ製品グループのプログラム・マネージャ.Cypress社の多くの設計プロジェクトを管理してきた.また,テスト技術および戦略マーケティング・グループにかかわってきた.