ヘッド・ハンターのつぶやき(3) ―― 転職先がブラック企業でないことをどうやって見分けるか

米焼酎

tag: 組み込み 半導体

コラム 2013年2月22日

 米国景気の回復と円安で,自動車業界は好調になってきました.街中にも外国人旅行者が戻ってきています.都内の高級マンションも売れているらしく,明るいムードを感じます.前月(2013年1月)は求人が増えてきたと言ったのですが,今月(2013年2月)は季節的な要因で求人が少なくなっています.

 個別に求人状況を尋ねると,どの企業も新年度に向けた事業計画の策定で忙しい様子です.昨年(2012年)末からの経済環境の変化に伴う国内事業の見直しと海外,特に米国における事業の見直しが中心で,2013年4月以降は求人増となるらしく,「遅咲きの桜」を期待できるようです.

 最近の話題としては,富士通のリストラがありました.家電メーカのリストラは予測していましたが,IT企業である富士通もリストラとは,ボディ・ブローを食らった感じです.もちろん,半導体事業が中心のリストラですから世の中の流れのとおりなのですが,まことに残念です. 

 

●社員が「物」として扱われる

 近ごろ話題となっている言葉に,「ブラック企業」と「追い出し部屋」があります.「ブラック企業」は景気の動向に関係なく,あらかじめ人員調整を見込んだ上で社員を多めに採用し,期待した能力以下ならば自己都合退職に追いやる,という人事施策です.「追い出し部屋」は,企業が抱える余剰社員を減らす作戦の一つです.どちらも社員を「物」として扱う悲しい考え方です.会社側は,「希望どおり正社員で採用したが,本人の能力不足」,「経営努力を超える円高不況」など,正当化する理由を並べていますが,「企業は人なり」を忘れた社会のひずみと感じています.

 社員数の調整は受け入れるとしても,社員に精神的ストレスを与えない策はないものでしょうか? 再就職支援サービスのような転職のための道具はそろっています.しかし,結局のところ,転職は本人の努力によります.再就職に向かって,自信を持って一歩を踏み出せる仕組みがほしいものです.

 

●「ブラック企業」はどうやって見分ける?

 最近,若い転職希望のエンジニアと転職のプロセスについて話す中で,ブラック企業の見分け方を聞かれました.本人は社会に出て3年目です.他の会社の様子は知らないし,調べる手段もありません.相談するにも信頼できる相手が見つからなかったようです.「転職先がブラック企業だったら?」と思うと,転職活動に力が入らないのは当然です.転職先をよく調べた上で転職する,ということはまっとうな考え方です.

 では,どうやって見分けるのでしょう?

 筆者は,業界における信用と社員の日常の態度から判断しています.うわさも大切で,必ず複数の人から聞いて裏付けをとります.毎晩遅くまでサービス残業を強制されていると社員の日常の態度に現れるので,会社訪問したときに見分けることができます.会社の玄関やトイレで社員の態度を観察したり,面接の機会に社内を見せてもらうことも重要です.残業が始まる時間帯は,会社の様子がよく分かるのでお勧めです.

 もちろん会社概要・決算書などの経営内容も大切ですが,非公開の会社が多いので,これは面接時に尋ねることになります.このとき,あいまいな数字や将来の期待値を強調されるようでは要注意です.新製品発表で意識的にメディア露出を多くしたり,多くの人材を集め始めるのも要注意.半年後の成果をみてからの昇給や,勤務地が変わるような説明も要注意.

 反対に,月給与に数十時間分の残業が既に含まれていることなど,重要な項目が文書で明示される会社は安心です.ブラックとは言えないまでもグレーな企業は多いですから,ホワイトな部分をよく調べて,最終的には妥協です.経営者が交代したり,社外コンサルタントが出入りを始めたら会社の雰囲気が急変することもあります.

 

 ●半導体業界再編の早期実現を!

 日本人は,自社の資源と他社の資源を融合させることに慣れていないのでしょうか? 技術が高度に発展する世の中で,次代の価値を創造するには,オープンとクローズを組み合わせることが必要です.なぜ,オープンを怖がってしまうのでしょう.オープンはさらけ出すことではありません.したたかに協調を求めていくビジネス・センスを持っていれば,何も恐れることはありません.

 日本の半導体の復活のために,スピードを上げて再編を進めてほしいと思います.切り出す事業が決まらないのか,マイコンとSoC(System on a Chip)の線引きなどでもめていると聞きます.ご用聞きや下請けの体質から脱却し,徹底したコスト管理とマーケティング力を持つ新しい会社が出てくることを期待します.

 聞くところによると,インドはソフトウェア産業で成功し,これから2020年に向けてハードウェア産業に大きな投資をするそうです.インドに追い抜かれないように,とにかくスピードがたいせつです.

 

 

こめじょうちゅう

 

 

●筆者プロフィール
米焼酎(ペンネーム).35年前,F-8,8080,Z-80マイコンと出会い,半導体業界にあこがれて二つの外資系半導体メーカを経験.今は,人材コンサルタントとして活動中.話をするのが好きで,焼酎があるとお尻に根が張って何時までも飲む癖がある.

 

 

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