つながるワイヤレス通信機器の開発手法(4) ――ハードウェアとソフトウェアを切り分ける

太田博之

tag: 組み込み

技術解説 2003年2月14日

●システム・アーキテクトを育てるためには

 以前はまだ製品の規模が小さかったので,筆者のような昔のエンジニアは自分でCPUが載ったプリント基板を設計し,プリント基板作成中にソフトウェアを設計し,プリント基板に部品を実装した後でデバッグを行うというようなことをひとり,もしくはふたりくらいでこつこつやっていた.電子部品にしても,実験室にないものはデータシートを見ながら業者に発注し,残りの部品は実験室を駆けずり回ってかき集めた.

 これぐらいのことをひとりでこなしながら育ってきたエンジニアは,まじめに(しごとの意義を感じながら?)業務を行っていれば,自然にシステム・アーキテクトになることが多いようだ.

 しかし,現在は製品の規模や複雑度が大きくなっているので,なかなか昔のようにソフトウェア開発とハードウェア開発の両方に携わることが難しくなってきている.筆者がいつも感じていることだが,業務が忙しく,どんなにその業務に慣れた人を必要としていても,やはりエンジニアのローテーションは行うべきだと思う.

 ある大手メーカの半導体事業部では,30才前後のエンジニアをフィールド・エンジニアやマーケティングの業務に就かせているという.この目的は,これまでまたはこれから設計開発するLSIが「顧客にどのように使われるのか?そのニーズはどこにあるのか? 」といったことを実感させることにある.このようなローテーションを行うと,エンジニアのマーケティングのセンスも磨かれ,製品が投入される市場の現状と将来の動向に対する意識が高くなる.

 エンジニアはシステム・アーキテクトを目指して業務を行い,組織はシステム・アーキテクトを養成するべくローテーションを行うことが必要だと筆者は強く思う.どうか目先の忙しさや利益だけで動かないでほしい.

 ローテーションなどでハードウェア設計とソフトウェア設計の両方に携われたエンジニアは幸せだと思う.しかし,たとえ一方にしか携わっていなくても,システム・アーキテクトとしてハードウェアとソフトウェアの切り分けを行わなければならない場面は多くある.

 その場合,ハードウェア・エンジニア,ソフトウェア・エンジニアのそれぞれの意見を聞きながら自分の判断を下す必要がある.このとき,それぞれの意見は必ずしも技術的な見解から発せられるものではない場合がある.すなわち,ハードウェア・エンジニアとソフトウェア・エンジニアの嗜好と特質から発生する意見である.その嗜好と特質をかんがみて,システム・アーキテクトは最適な解を製品に導入しなくてはならない.

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