つながるワイヤレス通信機器の開発手法(4) ――ハードウェアとソフトウェアを切り分ける
1.ハードとソフトの切り分けを決定する要素
ハードウェアとソフトウェアの切り分けは,純粋な技術要素以外にさまざまな要素がからんでくる.以下に,ハードウェアとソフトウェアの切り分けにかかわるさまざまな要素についてまとめてみた.
●システム・アーキテクトが切り分けを行うのがベスト
システム・アーキテクトという職種がある.これは「システムをアーキテクトする人」,つまり「システムを構築する人」である.さらに具体的に言うと,システム・アーキテクトとは,設計の初期段階からシステム(製品)全体を見渡し,最適なシステムを構築するという技術面におけるリーダ格の人を指す場合が多い.また,システムの規模によっては複数のメンバがその役割を果たす場合もある.
「システム全体を見渡して構成を決める」という点から考えると,ハードウェアとソフトウェアの切り分けは,システム・アーキテクトが行うのが最適だと思われる.また,システム・アーキテクトという職種が確立していないメーカでも,製品設計時にハードウェアとソフトウェアの切り分けを行っている人をシステム・アーキテクトと呼んでもいいと思う.
では,ハードウェアとソフトウェアの切り分けを行う中心となるシステム・アーキテクトにはどういう人が向いているのだろうか(図3).筆者の考えを以下に示す.
1)製品仕様に精通している人
2)通信仕様に精通している人
3)ハードウェア,ソフトウェアの両方に精通している人
4)最新の部品,ミドルウェアに精通している人
5)ハードウェア/ソフトウェア開発環境に精通している人
6)製品を投入する市場の現状と将来動向に精通している人
7)社内人事,経理に精通している人
ぜいたくなことを書いてしまったが,要はこのようなスーパ・エンジニアがシステム・アーキテクトであると言える.しかし,これらすべてに精通する人はたいへん少ないので,社内のCAD/CAE部門やマーケティング部門,プロジェクト・マネージャが上記の一部の機能を補完する会社も少なくない.CAD/CAE部門は5)について,マーケティング部門は1),6)について,プロジェクト・マネージャは6),7)について補完する可能性がある.
しかし,新規製品や新規市場の場合は,基本的にはシステム・アーキテクトが上記1)~7)のすべての分野でイニシアチブをとり,システム・アーキテクトひとりでは対応できない部分について,ほかの部門が補完することが多いようだ.筆者も新規の製品に着手するときには,よくひとりでパニックに陥っていたものだ.
〔図3〕こんな人がシステム・アーキテクトに向いている!?
製品仕様,通信仕様,ハードウェア,ソフトウェア,市場動向など製品に関するすべてに精通したスーパ・エンジニアがシステム・アーキテクトに向いている.ぜいたくな話ではあるが....