3GIOはPCIの皮を被ったInfiniBandか? ――第3世代I/O規格の概要
InfiniBandはサーバI/Oの規格であり,10GビットEthernetはネットワークの規格なので,用途はまったく別なのであるが,ことPHY技術に関して言えば双子の兄弟のようなものである.そのルーツはFiber Channelにさかのぼる.ここで使われた8b/10b エンコーディング技術によってPLLのロックを保証し(Embedded Clock Signalingともいう),DCチャージの弊害を取り除いた.また8b/10bエンコーディングによってデータ・コードに加えてスペシャル・コードを扱えるようになったのでパケットを構成できるようになり,それによってバイト単位での同期が取れるようになった.複数のシリアルのラインを束にまとめてひと塊のデータを転送する物理レーン(Physical Lane)技術の実現は,見かたによっては「ネオ・パラレル技術」の登場と考えることもできる.昔のパラレル転送の最大のネックは,パラレルのライン間でのスキューが大きくなりすぎてビットを揃えて送れなくなったことである.しかし図3のように物理レーンではビット単位ではなくバイト単位で各レーン(シリアル・ライン)に放り込むので,バイト単位で同期を取るだけでよくなった.つまりスキューに対するトレランスが大幅に向上したのだ.3GIOも当然この技術を引き継いでいる.
おおざっぱに言うと3GIOの1レーンは2.5Gbpsあるので,33MHz,32ビット構成のPCIの約2倍のバンド幅がある.相手がそのPCIの8倍のバンド幅を持つ133MHz,64ビット構成のPCI-Xでも,はたまた4X構成のAGPでも,3GIOを4レーン束ねれば負けないバンド幅が得られる.しかもそれを越えて8レーンから32レーンまで束ねられるのだから,3GIOはバンド幅に関しては現在無敵のバス規格である.いくらシリアルで高速に転送できるようになったと言っても,金属の中を電気信号で伝送するやりかたには電線の抵抗やトランジスタのスイッチング能力など電気的・物理的な速度の限界があって,一般に10GHzを越えられないと言われている.この壁を越えるにはマイクロウェーブのような電波を伝える伝導管を使ったり,光にしてファイバを使って伝送するしかない.しかし現在の技術ではチップから直接電波や光を出すのは難しいので,プリント基板上の技術としては両方ともそぐわない.シリアル転送が上限に達しつつある現在,この物理レーン技術なくしてはシリアル転送の出番はなかったのである.
〔図3〕複数のレーン
〔写真1〕Intel Developer Forumの会場になったSan Jore Convention Center
〔写真2〕PCI-SIGの展示ブース