破壊と創造のサイクルを回せ!《アイデア出し編》 ―― ものアプリハッカソン(1)
●ユーザを発見,分析,理解する
各チームは,さっそく三つのテーマから一つを選択し,そのテーマで何を創り出すか,というコンセプトのプロトタイプを作成する作業に入った.この作業は,先ほど山口氏が解説したイノベーション創造プロセス(写真4)に沿って行われた.すなわち,下記の手順である.
- ユーザ発見:実在の一人の人物を,ユーザとして決める.
- ユーザ理解:ユーザの体験や経験を具体的にイメージする.
- 目的の定義:ユーザが「実現したいと思っていること」,「自身も認知していない本当の目的」を定義する.
- アイデア発想:目的を実現するための切り口を,バイアスを崩して発想する.複数の要件を実現するアイデアを創り出す.
- プロトタイプ:価値を確かめるために,形にしてみる.
- テスト:実際に作った試作品をユーザに渡し,ユーザからフィードバックをもらう.
まずは,特定の実在の一人をユーザとして決め,分析していく作業が行われた.個々のメンバが特定のユーザをさまざまな切り口でイメージして付せん紙に書き込む.それをチーム内で集めて,さまざまな切り口で分類し,ユーザを定義していく(写真7).
さらに,ユーザを分析してインサイト(本質的な目的)を見つけるために,ユーザの体験に着目して,ユーザの目的(表面的な「ニーズ」と深層にある「インサイト」)を抽出する.その時に使うツールは,ユーザの体験を,過去/現在/未来の時系列で並べた「ライフ・イベント・マップ」である(写真8).ユーザの体験(ライフ・イベント)を,「イケてる/イケてない」という気分の高低でプロットする.その上に,テーマに関連する曲線を重ね合わせ,「面白い経験」との相関点,または逆相関にある経験を抽出する.
そして,各個人でマップ上のユーザの体験に着目し,ユーザの表面的な目的(ニーズ)と深層にある目的(インサイト)を抽出する.それをグループ間で共有して,再度,ユーザのニーズとインサイトを1枚の大きな紙にまとめあげる(写真9).