組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(5) ―― 直前対策! 情報処理技術試験特別号

久保 幸夫

tag: 組み込み

コラム 2011年2月 4日

●過去問を徹底的にフォローすればハードウェア問題も怖くない

 次は,エンベデッドシステムスペシャリスト試験のFAQです.

Q5 エンベデッドシステムスペシャリスト試験の受験を考えていますが,ソフトウェア・エンジニアなので,午前Ⅱのハードウェア系の問題が解けません.なにか良い対策方法はありますか?

 平成22年のエンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前Ⅱ(専門分野問題)の場合,25問中13問がハードウェア系の問題でした.また,旧制度の平成20年以前のテクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)の午前問題でも,ハードウェア系の問題が数多く出題されている傾向があります(平成21年の午前Ⅱだけは例外で,ハードウェア系の問題が少ない傾向にあった.平成22年に元の傾向に戻った).そのため,午前Ⅱを攻略するためには,ハードウェア系の問題の得点率をいかにアップするかが課題です.

 ハードウェア系と言っても,応用情報技術者試験や高度共通の午前Ⅰでよく出題されるプロセッサやメモリに関する問題は少なめで,制御用マイコンの周辺回路である,汎用I/Oポートやタイマ・カウンタ,A-Dコンバータ,DMA,割り込みコントローラ,PLLや分周器などのクロック回路など,いかにも組み込みシステムらしい問題が数多く出題されています.要は,組み込み制御マイコンの周辺機能の知識や,それを使いこなすスキルを問う応用問題が出題されます.

 組み込みマイコン制御のハードウェアの本を読めば,ハードウェアの「知識」は身に付けることができますが,応用問題は実際にやってみないと,スキルとして身に付きにくいと思います.そこで,シンプルな8ビットや16ビットの組み込み制御マイコンを実際にいじってみることをお勧めします.最近は,トレーニング用の安価な制御マイコンが数多く販売されており,はんだ付けなどの電子工作が不要な基板も多くあります.また,雑誌や本の付録として,制御マイコン基板が付いたものもありますので,それらを活用してください注2

注2:例えば,CQ出版社からは,USBで接続する78K0Rマイコン基板が付属した雑誌「ディジタル・デザイン・テクノロジ No.6 組み込みソフトウェア開発の常識 ―― 実用的な機能を記述し,基板で動かしてみよう!」などがある.

Q6 マイコンのハードウェアやソフトウェア技術は実機で勉強するのが理想かもしれません.でも忙しくて,そのような時間はとれません.

 4月実施の春の試験は,試験対策のピークも2月~3月となり,社会人の方にとっては年度末の忙しい時期と重なります.確かに,「えっ! そんな時間はないぞ」とおっしゃる方も多いかと思います.でも,心配は無用です.

 エンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前のハードウェア系の問題は,過去の問題が再度出題される傾向が多くあります.そこで,試験センターのWebサイトから公開されている平成16年以降のテクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)やエンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前問題のPDFをすべてダウンロードし,見比べてください(できれば,印刷して並べて見たほうがよい).よく似た問題が数多くあることに気が付くと思います.なお,新しい問題も出題されますので,過去問題だけの勉強では得点力不足になります.できれば組み込みハードウェアの本を1冊読んで,勉強することをお勧めします.

Q7 去年(平成22年)のエンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前Ⅱでいきなり,OPアンプの反転増幅器の問題が出てきて,面くらってしまいました.なぜ,時代遅れにも感じるアナログ回路の問題が出るのでしょうか?

 毎年数問ですが,アナログ回路(例えばOPアンプの反転増幅器)やディジタル回路,パルス回路の過渡現象など,電子回路の知識が必要な問題が出題されています.この質問にもあるように,平成22年の午前Ⅱ問1では,いきなりOPアンプ(演算増幅器)の反転増幅器が出てきて,自信を喪失してしまったとの話を数多く聞きます.「なんでこんな問題が出るのだ!」との書き込みを掲示板で見かけましたが,それには出題される意図があります.まずは,問題を見てみましょう.

 A-Dコンバータの入力部分やD-Aコンバータの出力部分に,OPアンプの増幅器を使うことがよくあります.この問題は,その知識を問うために出題されています.まずは,A-Dコンバータの場合で説明します.

 A-Dコンバータのアナログ入力の範囲は,マイコンの電源電圧までの範囲(例えば0~5Vや0~3.3V)が多いです.例えば,接続するセンサが0V~1Vの範囲でアナログ出力するとなると,A-Dコンバータの性能を生かしきれません.そこで,OPアンプの増幅器を使用して,A-Dコンバータに適した電圧範囲に増幅する必要があります.

 逆に,A-D変換を行う対象がA-Dコンバータのアナログ入力の範囲を大きく超えるときは,A-Dコンバータを壊さないためにも,OPアンプなどの回路で電圧を下げて,A-Dコンバータを保護する必要があります.また,A-Dコンバータの入力インピーダンスの問題で,A-Dコンバータの入力に増幅率が1の(要は増幅しない)バッファアンプを取り付けることもあります.D-Aコンバータの場合も,出力範囲が0Vからマイコンの電源電圧までの範囲のものが多いので,目的の電圧まで上昇させるには,増幅器を使うことになります.

 なお,問題の解答はこちらを参照してください.

 このようなアナログ回路の知識が必要な問題も,毎年出題されます.エンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前Ⅱ問題冊子の冒頭には,表1のような回路記号の一覧表があります.

表1 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午前Ⅱ 問題に掲載されている回路記号


抵抗,コンデンサ,ダイオード,トランジスタ,演算増幅器(OPアンプ),接地(GND)など,基本的な回路記号が並んでいます.要は,これらの回路記号の部品を使用したアナログ回路も出題範囲であるということです.

 アナログ回路に苦手意識のある人も多いでしょう.でも,この世の多くの現象はアナログであり,アナログの情報をA-D変換してプロセッサに入力する必要があります.また,最終的な出力もアナログになることが多いのです.だから,アナログの知識も,少しでも多く持っていた方がよいでしょう.

 とは言っても,アナログ回路をきっちりと勉強するのは時間もかかりますし,試験までこればかり勉強するわけにもいきません.「じゃ,どうすればよいの?」と不安になるかもしれませんが,ご安心ください,アナログ回路を問う午前試験の問題は毎年1~2問程度で,全体としての出題の割合は少なく,他の分野の問題で得点できれば充分にカバーすることができます.午前は100点を目指す必要はなく,6割以上(できれば余裕をもって7割以上)を目指せばOKです.

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