組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(5) ―― 直前対策! 情報処理技術試験特別号
午前Ⅱ試験では,組み合わせ回路やフリップフロップなどの論理回路の問題も数問出題されます.例えば,H20年度 午前 問15は,このような問題が出題されています.

<H20年度 春期 テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)午前 問題 問15を引用>
これは,RS-フリップフロップによるスイッチ回路のチャタリング対策(防止)の問題です.チャタリング対策は,エンベデッドシステムスペシャリスト試験では定番のテーマです(解答はこちらのページを参照).
もう1問,同じくH20年の午前のハードウェアの問題です.

ア 250 イ 400 ウ 2,500 エ 4,000
<H20年度 春期 テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)午前 問題 問15を引用>
ここでは,FPGAなどのハードウェア設計で重要な概念である,同期回路の設計における最大動作速度の問題が出題されています(解答はこちらのページを参照).
このような,フリップフロップなどの問題やハード設計の問題が毎年数問,出題されています.また,フリップフロップを組み合わせたカウンタ回路なども出題されています.
なお,基本的な論理回路の問題(AND,OR,NOT,E-OR)や加算器(半加算器,全加算器)は,共通問題として午前Ⅰで出題されることもあります.
リアルタイムOSの問題は,午前での出題は少なく,その代り午後Ⅰや午後Ⅱ試験で応用問題として出題されています.午後では,リアルタイムOSのシステム・コールが出題されています(表2)注3.
表2 出題されたシステム・コールの例

システム・コール名はITRONに似た感じがありますが,このリアルタイムOSはエンベデッド試験だけで使われる仮想的なリアルタイムOSです.表を見ると,タスク制御のシステム・コールや,セマフォ,イベント・フラグ,メールボックス,メモリ・プールなどの一般的なシステム・コールが並んでいます.午後の問題ではこららのシステム・コールが提示され,それを使用した応用問題が出題されます.特に,セマフォを使用した排他制御や同期制御は定番です.複数のタスクが,複数の共有資源を,セマフォを使用して排他制御して取り合いをすると,デッドロックが発生しやすくなる場合があります.この,デッドロックの防止方法などを理解しておきましょう.また,イベント・フラグ,メールボックス,メモリ・プールなどもよくテーマとして出題されているので,基本的な知識を付けておきましょう.その後に,実際の午後Ⅱの問題の解答演習を行ってください.
注3 ちなみに平成22年の試験には,リアルタイムOSのシステム・コールの問題は出なかった(それ以外の年は,平成13年の試験から続けて出題されている).これが,平成22年だけの特徴なのか,平成23年以降も続くのかは,4月の試験問題を見ないと分からない.
以上,情報技術者試験の特別号としまして,この特別号では,応用情報技術者試験(AP)とエンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)を中心に,FAQを掲載しました.皆さんの受験の選択や試験対策の助けになれば幸いです.
くぼ・ゆきお
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