組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(5) ―― 直前対策! 情報処理技術試験特別号
解答・解説のページ(その2)
<H20年度 春期 テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)午前 問題 問15を引用>
RSフリップフロップの基本的な問題です.RSフリップフロップは,S(セット)とリセット(R)の入力端子があり,一度,S(セット)が有効になると,出力がアクティブ(1)になり続けます.その後は,リセット(R)が有効になるまで,その出力状態を保持します.
問題の図もRSフリップフロップの一種で,NAND素子2個で構成されています.
NAND(NOT AND)は,2つの入力が両方ともHのときに出力がLになり,それ以外の場合,出力がHになります(参考:Interface 2009年3月号の記事「ロジック回路の基礎の基礎」).
初期状態では,A=H,B=Lであり,下側のNANDの入力(下側)がLなので,出力は必ずHになります.すると,上のNANDの入力(下側)はHになります.A=Hなので,NANDの出力(X)はLとなります.
スイッチが切り替わり,A=L,B=Hになると,上のNANDの入力(下側)はHであってもA=Lにより,出力(X)はHに変化します.また,下のNANDの入力もB=H,X=Hとなるので,出力はLになります.一度X=Hになると出力が安定するので,Aが不安定になりA=Lに戻っても,X=Hを保持します(下のNANDの出力がLとなり,上のNANDの入力(下側)もLであるため,常に上のNANDの出力はHとなる).
よって答えは,出力(X)がLからHへ変化しているイが正解となります.
なお,この問題の図はRSフリップフロップの一種でAがセット,Bがリセットとなりますが,入力は負論理(電圧がLのときアクティブ(論理1)で,電圧がHのときネガティブ(論理0))になっている点に注意してください.
この問題のAのような,スイッチの開閉時にH,Lが不安定になる現象をチャタリングと呼びます.チャタリングが発生すると,1回のスイッチのオン/オフを複数回のオン/オフと誤認するなどの不具合の原因になり,チャタリングの対策を行う必要があります.チャタリングの対策方法には,この問題のようにRSフリップフロップなどを使用してハードウェアでチャタリングを防止することもできますが,ソフトウェアでも対策が可能です.この,チャタリング対策もエンベデッドスペシャリスト試験の定番テーマの一つです.
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