組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(5) ―― 直前対策! 情報処理技術試験特別号
●データベースやSQL言語の知識は「組み込み」には関係ない?
次は,出題範囲と自分のカバーするべき領域についてのFAQです.
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験ではデータベースの関連問題が出題されます.そのため,リレーショナル・データベース・マネジメント・システム(RDBMS)の基礎知識やデータベースの設計(データ中心アプローチやテーブルの正規化),ER図(Entity Relationship Diagram:実体関連図),SQL言語などの知識が必要です.
データベースというと組み込み系とは関係がないように思われるかもしれませんが,実際の携帯電話やカーナビでは,組み込み向けデータベースが使用されています.また,Androidのフレームワークにもスタンドアローン環境で動作するデータベース管理システム「SQLite」が組み込まれています.さらにT-Engine2.0のフレームワークにもSQLiteが組み込まれるようです.今はデータベースを使わないとしても,先々に使うこともあるかもしれないので,勉強しておいて損はないと思います.ちなみに,午後の試験でもデータベースの応用問題が出題されますが,午後の試験は選択式なので,逃げることができます.
ちなみに,データベースの設計で用いられるデータ中心アプローチ(DOA)の理解は,オブジェクト指向アプローチ(OOA)の理解につながります.データ中心アプローチは,やや強引で語弊があるかもしれませんが,「データをまとめて,別のテーブルにする」という一種の整理術とも言えます.言い方を変えると,数学の「素因数分解して,数式を整理する(同じような繰り返しが含まれるところを,かっこにまとめて外に放り出す)」に近いような感じを受けます.このデータ中心アプローチの「データをまとめて別にする」という考え方に,メソッド(手続き)という概念を加えて,データとメソッドを一まとめにした考え方になり,それがオブジェクト指向に進化しました.よって,データ中心アプローチを理解することは,オブジェクト指向の理解を助けることにつながると考えます.
●過去問をやり抜いて自分の弱点を把握する
次は,応用情報技術者試験の午前試験やエンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前Ⅰ試験(高度共通)に関するFAQです.
応用情報技術者試験の午前試験やエンベデッドシステムスペシャリスト試験などの高度共通午前Ⅰ試験は,テクニカル系,マネジメント系,ストラテジ系から幅広く出題されます.初めてその問題を見たときは,その分野の広さに驚かれるかもれません.でも,きちんと対策をすれば,大丈夫です.
応用情報技術者試験の午前,および高度共通午前Ⅰ試験の対策としては,まず,これらの試験対策本を1冊用意して,一通りの知識をインプットしてください.それから一度,本試験と同じ時間を守って,過去問題を全問解いてみてください.すると自分の弱点分野が見えてきます.弱点分野が分かったら,その分野を中心に試験対策本の解説やほかの書籍を使用して,再度インプットを行ってください.そして,また過去問題を解いてみる.このスパイラルを繰り返してみてください.最初は得点が低くても,スパイラルを回すことにより,徐々に得点が上がり,3~4回繰り返せば,かなりの力が身に付くはずです.
なお,過去の試験問題は試験センターのWebサイトからダウンロードできます.平成21年春試験以降の4回分がありますし,それ以前のソフトウェア開発技術者(SW)の午前問題も,演習に使えます(出題分野の範囲は多少異なるが,問題のレベルは同じである).また,インターネット上にも情報処理技術者試験に関して多くの情報があるので,それを活用する方法もあります.その中には,応用情報技術者試験の午前問題の解説動画をYouTubeにアップロードして公開しているサイトもあります(参考:「わくわくスタディワールド」).
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の午前試験,それに高度共通の午前Ⅰ試験では,UMLの問題が出題されることがあります.そのため,基本的なUMLの図の意味や読み方,書き方を理解しておくとよいでしょう.
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の午後試験では,UMLを使用したオブジェクト指向設計の問題が出題されています.具体的には,クラス図やシーケンス図を使用した問題が出題されています.
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の午後試験では,オブジェクト指向を大きく取り入れた問題はまだ出題されていません.しかし,状態遷移図(ステートマシン図),ユースケース図,シーケンス図,タイミング図などが出題されています.これらの図はUMLにも取り込まれていますが,オブジェクト指向と直接関係のない図と言えます.
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